経済

2025.12.16 07:15

冬のボーナス「増加」企業は22.7%で頭打ち

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国内景気のカギを握る個人消費の動向は、2026年の景気回復を左右する年末商戦において、冬のボーナスへの注目度を一段と高めている。春闘では賃上げの動きが続いているものの、物価上昇のスピードに賃上げが追いつかず、実質賃金はマイナス傾向が続いている状況だ。こうした背景を踏まえ、帝国データバンクが実施した2025年冬季賞与の動向調査からは、ボーナス支給額の伸びが限定的であることが明らかになった。

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2025年冬は、80.5%がボーナスや一時金などの賞与を支給する予定であり、この割合は2年連続で8割台を維持している。しかし、従業員1人当たりの平均支給額が前年より「増加する」と見込む企業は22.7%で、前年からわずかに減少した。一方で、「賞与はあり、変わらない」と回答した企業は44.7%と圧倒的に高く、ボーナスが増加する勢いに欠けている実態が浮き彫りとなった。

インフレ圧力の継続に対し、特に中小企業では支給原資の確保が容易ではない状況が背景にあると見られる。また、「賞与なし」の企業は12.0%にのぼり、企業の収益改善がボーナス支給に十分に反映されていないことが示されている。

冬季賞与が「増加」する企業を業界別に見ると、特に伸びが目立つのは「運輸・倉庫」と「農・林・水産」の2業界である。運輸・倉庫は33.6%の企業で増加を見込んでおり、業界別で最も高い割合となった。これは、自動車関連の回復やEC需要の拡大が追い風となっている一方、深刻な人材確保難が続いていることが増額の要因となっている。

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農・林・水産では32.5%の企業が増加を見込み、前年から大幅な伸びを示した。鶏卵やコメ、食肉価格の高止まりによる需給引き締まりが背景にある。

一方で、ボーナスが3年連続で増加した企業は7.6%と前年より増加したものの、その割合は依然として限定的である。継続的に増額できる企業とそうでない企業の二極化が鮮明になっており、物価高に悩む消費者全体に光明が差しているとは言い難い状況だ。

2025年冬のボーナスは、「増加」が「減少」を9.5ポイント上回っており、増加傾向自体は続いている。しかし、2026年以降も飲食料品など生活必需品の値上げが続くと予想されるなか、企業がボーナスの原資を確保し、家計の購買力を下支えすることが、消費活性化のカギとなるだろう。

出典:帝国データバンク「2025年冬のボーナス動向」より

文=飯島範久

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