2025.12.12 14:15

LEXUSの五感のオーケストラ、あるいは竹の香りのする電気自動車について

LEXUSが35年以上の年月をかけて磨いてきた静粛性。その先に何があるのか、10月1日の品川で体験することになった。新型ES・新型モデルRZの日本初公開イベント「SENSES」で待っていたのは、竹の香り、美山荘の和菓子、そして車内を森に変える光の演出。電気自動車の無音を逆手に取り、新しい音を創造するLEXUSの試みは、日本企業が「体験価値」を本格的にプロダクトへ実装し始めた転換点を示していた。

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会場に入った瞬間に鼻腔をかすめた、懐かしいようで新しい香り。竹を思わせながら、それを超えた洗練された香り。聞けばそれはジボダン社の「Bamboo Accord」をベースに開発した、5種類のLEXUSオリジナルフレグランスだった。

グローブボックスにカートリッジを装着すると、車内に香りが漂うという機構。5つの時間帯をイメージして開発した香りをその時のフィーリングで選べるという趣向だ。ジボダンジャパンのシニアパフューマー、大川正洋とLEXUS CMFXチームが共同で創り出した香りは、朝4時の「晨明(しんめい)」から深夜1時の「半夜(はんや)」まで、時間に香りを与えるという発想が面白い。

「最初に香りのアイデアを提案したときは、宇宙人を見るような目で見られました」と大川は笑う。2年かけて、LEXUSの世界観との調和を実現させたという。夜の渋滞で「半夜」の神秘的なムスクが漂ってきたら、イライラも収まるかもしれない。

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ジボダンジャパンのシニアパフューマー、大川正洋
ジボダンジャパンのシニアパフューマー、大川正洋
「美山荘」の四代目当主、中東久人
「美山荘」の四代目当主、中東久人

ミシュラン二つ星「美山荘」の四代目当主、中東久人とのクロストークも示唆に富むものだった。

「美山荘では、お客様が席に着くまでの道のりも一つの体験としてデザインしています。車も同じで、限られた空間に身を置いた瞬間、別の場所に来たような感覚になる。LEXUSはそれを理解し、おもてなしの心で表現されていますよね」(中東)。

いうなればLEXUSが考える移動体験は、移動する茶室のようなものなのか。では、茶室という装置が日本人の美意識に、精神に、文化に働きかけてきたように、これからのモビリティはわれわれになにをもたらしていくのだろうか。

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text by Tsuzumi Aoyama

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