2025.12.12 14:15

LEXUSの五感のオーケストラ、あるいは竹の香りのする電気自動車について

美山荘コラボスイーツとSensory Conciergeが演出する車内体験

会場では、中東がこのイベントのために特別に開発したスイーツが振る舞われた。

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羊羹に杏のペーストを厚く敷き、そこに早生のぶどうを載せ、仕上げに熟成させた実山椒を散らした和菓子。実山椒がきりっと味を引き締め、爽やかな後味を残す。これもBamboo Accordからインスピレーションを得たものだという。

中東は「和洋中の境界を超えて、食材にベストな調理法を選ぶ。それが私たちの哲学です」と語った。和食とはこういうものである、日本文化とはかくかくしかじかであるという定義から食材を扱っていくのではなく、料理を口にする体験から逆算して発想する。人生を豊かにする体験はいかに作られているのか、その本質を短い言葉であらわしていた。

展示されていた新型ESの内装を見ると、随所に竹をモチーフにした加飾が施されており、触ると独特の温もりを感じる。ダッシュボードやドアトリムに施された竹のニュアンスは、光を受けて微妙に表情を変える。

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新型ESのインテリア
新型ESのインテリア
新型ESのインテリア
新型ESのインテリア

「光と共鳴する新しい体験型マテリアル」とLEXUSが呼ぶこの素材は、新型ESにおいては装飾のためのパーツにはとどまらない。フレグランスのカートリッジにさえ、粉砕した竹を混ぜ込んだ樹脂を使うという徹底ぶりで、世界観の中核をなす存在だ。

竹は木材の10倍の速さで成長し、3年で素材として使用可能になり、生育中に大量のCO2を吸収する。LEXUSはこの竹を「ブランドのシグネチャーマテリアル」と位置づけた。環境性能の高い素材を、ラグジュアリーカーの主要素材として全面採用する。これは量産車メーカーとしてはかなり思い切った決断だ。サステナビリティという言葉が形骸化しがちな中、実際のプロダクトで実装してみせたLEXUSの姿勢は、日本企業の新しい方向性を示している。

LEXUSが掲げる、五感を刺激するクルマづくりという点では、今回の目玉機能「Sensory Concierge」が実に興味深い。

デモンストレーションで「INSPIRE」モードのボタンを押すと、車内が赤い光に包まれ、鼓動のようなリズムが流れ始める。まるで音楽フェスの最前列にいるような、あの高揚感に包まれた。

さらにモードを「REVITALIZE」に切り替える。

森になった。

緑の光、せせらぎの音、涼しい風が吹き抜ける。シートリフレッシュも優しいタッチに変わり、『となりのトトロ』でメイが初めて森に入っていくシーンを思い出す。あの空気感。車内にいることを忘れそうになる。

「美山荘」の四代目当主、中東久人
新型ESのSensory Concierge

中国市場から導入予定のこのシステムは、音楽、イルミネーション、空調、シートリフレッシュを統合制御するもので、「パフォーミングアーツ」がコンセプトだという。6つの世界観を持つDynamic Colorは14色、Fixed Colorは50色から選べる。「幽玄」「幻想」「奏」「移ろい」「閃光」「鼓動」という日本語のネーミングも、カスタマイズの幅も広い。

LEXUSクルマ開発センターVD統括部の福原千絵が説明してくれた技術的な詳細は複雑だったが、体験そのものはシンプルだった。車内が移動空間から体験空間に変わる。都心の渋滞という憂鬱な時間が、このシステムがあれば瞑想の時間に、いや瞑想というより、感覚を開く時間になるかもしれない。

次ページ > ESとRZ、それぞれが描く電気自動車の未来

text by Tsuzumi Aoyama

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