経済・社会

2025.12.10 14:15

ふるさと納税で「返礼品×地域創生×こどもの貧困解決」——インパクト起業家が実装する新たな仕組み

「生まれた環境によるこどもの機会格差が存在しない社会」というビジョンを掲げているインパクトスタートアップ、ネッスー代表取締役・木戸優起

「生まれた環境によるこどもの機会格差が存在しない社会」というビジョンを掲げているインパクトスタートアップ、ネッスー代表取締役・木戸優起

2025年12月4日、こどもの貧困解決と地域経済の活性化を同時に実現する新たなプラットフォーム「こどもふるさと便」が本格始動した。手がけるのは、インパクトスタートアップのネッスーだ。代表取締役の木戸優起は、1.4兆円規模のふるさと納税市場と、既存の物流インフラ、子育て支援を組み合わせることで、福祉と経済が循環するエコシステムの構築に挑んでいる。

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寄付者には返礼品を、こどもたちには特産品を届け、地域には産業振興をもたらす——。一見すると相反する要素を繋ぎ合わせ、「三方よし」の革新的なアプローチを実装した裏側には、同社が挑む「子どもの機会格差」という社会課題解決に向けた「インパクト起業家」としての冷静な戦略、そして現場に向き合い愚直にかたちにする「使命感」があった。


日本において「こどもの貧困」は深刻な社会課題だが、それを支える支援の最前線は、構造的な課題を抱えている。多くのフードバンクやこども食堂は、製造や流通の過程で生じた「未利用食品(食品ロス)」の寄付を活用し活動を続けている。しかし、「余剰」を前提とする以上、どうしても支援の量やタイミングには波が生じてしまう。「あるときはあるが、ないときはない」。これでは、継続的な支援を必要とする家庭に対し、安定したセーフティーネットを提供し続けることは難しい。

「私たちは未利用食品の活用も重要だと考えて取り組んでいますが、それだけでは支援の量もタイミングもコントロールできません。こどもたちに必要なものを『安定的』に届けるためには、あらかじめ予算が決まっている『事業』にする必要がありました」と木戸は話す。

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安定供給のためには、確固たる財源(予算)が要る。そのために木戸が目をつけたのが、1兆円市場に成長した「ふるさと納税」の仕組みだった。そして、この制度を活用し、課題を突破するための鍵としてたどり着いたのが、地域の「特産品」を組み込むことだった。

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加藤智朗=文 平岩亨=写真

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