「くじ引き」のような格差をなくすために
ネッスーの経営スタイルは、堅実かつ長期的だ。創業期から、段ボールやプラ容器などの資材の循環型調達を設計・提案する「サーキュラーエコノミー事業」を展開。外部からの大型調達に頼るのではなく、自社事業で生み出した収益を原資に、フードバンク事業を立ち上げるというポートフォリオ経営を実践してきた。木戸がこれほどまでに事業の「持続可能性」にこだわる背景には、幼少期の原体験がある。
「小さい頃、病院で難病と闘うこどもたちと触れ合う機会がありました。生まれた環境や身体的な条件によって、人生のスタートラインがまるで『くじ引き』のように決まってしまう。その現実に衝撃を受け、この格差に対して何もしないわけにはいかないと心に決めたんです」
だからこそ、彼の眼差しは「こどもふるさと便」による「食料支援」の先にある未来へも向けられている。もし、横浜のような都市部でスポーツチームと連携した「観戦チケット」を、兵庫県のような皮革産業が盛んな地域で地場産品の「ランドセル」を提供できたなら——。地域が持つ資産を再定義することで、経済的な理由で諦めざるを得なかった「体験」や「教育」の壁さえも、取り払うことができるはずだ 。課題から逆算し、物流を整え、経済を回し、社会の仕組みそのものを変えていく。生まれた環境にかかわらず、誰もが機会を得られる社会を目指す木戸の挑戦は、まだ始まったばかりだ。


