食&酒

2025.12.16 14:15

『定員400名2時間即決』のワイナリーも、ぶどう収穫ボランティア活況なぜ?

長野県「千曲川ワインバレー」での収穫ボランティア。不明点はスタッフに聞きながら、収穫を進めていく

長野県「千曲川ワインバレー」での収穫ボランティア。不明点はスタッフに聞きながら、収穫を進めていく

ワイン醸造のためのブドウの収穫シーズンになると、SNSのタイムラインを賑わすのが「収穫ボランティアに行ってきました!」「最高の週末でした!」という嬉々とした投稿だ。推しの造り手を応援したい、仲良くなりたい、ワイン造りの裏側を見てみたい……様々な理由から、畑の手伝いに奉仕するワイン好きは多い。

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たとえば、世界から熱視線を浴びる北海道・余市のドメーヌ・タカヒコでは、募集をかけると定員(400名)が2時間で満席になるほどの人気ぶりだ。人気ワイナリーへの収穫参加は、もはや「ステータス」と化しているかのようだ。収穫ボランティアは、なぜこうも人を惹きつけるのだろうか──。

レジャーとしての収穫ボランティア 

かくいう筆者も、どっぷりワイン沼に浸かった身。ワインの勉強もかね、畑の手伝いには何度も参加している。先日は、長野・東御市のRue de Vin(リュードヴァン)で収穫ボランティアに参加した。ピクニックランチでは自社ワインがたっぷり振るまわれ、満足度はお墨付きとの評判で、「いつか行ってみたい」と思っていたのだ。

長野県は全国屈指のワイン産地で、ワイナリー数は山梨県に次いで全国2位。とくに千曲川流域の「千曲川ワインバレー」はワイナリー設立が相次ぐ勢いのある地域だ。 リュードヴァンは、エッセイストの玉村豊男氏が興したヴィラデストワイナリーと並び、地域のワイン生産をけん引する存在。オーナーの小山英明氏は2006年にブドウ栽培をはじめ2010年にワイナリーを設立、ソーヴィニヨン・ブランをはじめとするヨーロッパ系品種のプレミアムワインで全国に名を広めた。

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特筆すべきが、2007年と全国的にも早い段階から「収穫ボランティア」を受け入れてきた点だ。

 「千曲川ワインバレー」オーナー小山英明氏
「千曲川ワインバレー」オーナー小山英明氏。バイクでぶどう畑の見回りを行う

最寄り駅に降り立つと、車で迎えに来てくれたのはワイナリースタッフではなく、埼玉在住の常連ボランティアの方だった。「実は僕、お酒が飲めないんです」と笑う彼は、収穫期には毎週のように送迎や畑作業を手伝っているという。「畑仕事が好きで、ここに来るとワインについて自然と学べる。気づいたら、かなり詳しくなっていましたよ」。

この日は10月の三連休最終日。子連れ家族、大学院生グループ、一人参加の女性まで、40名以上が集まっていた。収穫の仕方をスタッフが丁寧に説明し、子どもたちも、軍手をはめた小さな手で楽しそうにぶどうを摘み取っていく。「造り手の苦労を知ると、ワインの味が変わりますね」と女性参加者はにっこりしていた。

午前中の作業を終えると、青空の下でお待ちかねのピクニックタイムだ。ワイナリーの理念である「ワインは食とともにある」を体現する時間である。事前に購入した地元食材たっぷりのシェフ特製ランチボックスを味わいながら、同社のワインが次々とグラスに注がれる。

ワインを飲みながら、参加者とも話が弾む
ワインを飲みながら、参加者とも話が弾む

背景にあるのは「まずはレジャーとして楽しんでほしい」という小山氏の思いだ。そのためピクニックの時間をたっぷり取り、集合・解散時間も柔軟に設定して、気軽に参加できるスタイルを徹底している。 

「食もワインも脇役で、主役は人。楽しく会話するためのツールなんです」と小山氏。「ほかのワイナリーに浮気しても、みんな戻ってくるんですよ」と笑うように、20年続けてきたホスピタリティのノウハウが、参加者の満足度を高めている。

今ではリピーターが全体の約半数を占めるのがその証だ。輪が広がった結果、今年は過去最多の500名以上が参加。収穫体験がきっかけとなり社員やアルバイトになった人もおり、収穫は、出会いの場としても機能している。

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