食&酒

2025.12.16 14:15

『定員400名2時間即決』のワイナリーも、ぶどう収穫ボランティア活況なぜ?

長野県「千曲川ワインバレー」での収穫ボランティア。不明点はスタッフに聞きながら、収穫を進めていく

「自分のワイン造り」から「地域のワイン造り」へ

小山氏が目指すのは、「一代で終わるワイン」ではなく、「次世代につなけるワイン」だ。そのための基盤として、地域の生産者を支えるリュードヴァンのグループ会社「カーヴ・ド・ミドウ」を設立し、2023年には御堂地区に新たな醸造所も建設した。 

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リュードヴァンのグループ会社「カーヴ・ド・ミドウ」の社屋
リュードヴァンのグループ会社「カーヴ・ド・ミドウ」の社屋

御堂地区には11の生産者が畑を持ち、総面積は約27ha。本州では最大規模のまとまった「ワイン用ぶどう団地」である。この土地はかつて宝酒造がワイナリー建設を計画していたが頓挫し、荒廃農地となっていた。「このままではいけない」と、地主と協力しながら小山氏らが働きかけ、農地化を実現したという経緯がある。 カーヴ・ド・ミドウでは、周辺農家への技術指導のほか、地区全体の土手の草刈りなども自ら請負い、農地保全に取り組む。 

眺望がみごとな御堂地区のワイン用ぶどう団地
眺望がみごとな御堂地区のワイン用ぶどう団地

ワイン造りの方針も本家とは大きく異なる。本家が樽熟成や長期瓶内熟成のスパークリングなど、時間を投じるプレミアム路線を取るのに対し、ミドウは樽を使わず、収穫から短期間で仕上げるフレッシュなワインに特化する。早期に販売できるぶん資金繰りが安定し、味わいや提供シーンでも本家と明確に差別化できる。小規模ワイナリーが持続的に運営するための、現実的かつ戦略的なモデルだ。

未来の働き手を育てる

リュードヴァンでは、御堂地区を含め12haの畑を6名で管理している。今後収量が増えれば、収穫には人海戦術が必要になる。そのためミドウでは、有償アルバイトの採用も視野に入れている。

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「収穫体験に参加した人や、子どもたちが、将来ここで働きたいと思ってくれれば」と小山氏。実際、収穫には地元の小学生も毎年手伝いに来ており、幼少期からワインを身近に感じて育った子どもたちが、未来のワイン文化の担い手になる可能性も高い。

働く環境づくりにも余念がない。小山氏自身、フランスで収穫作業に参加した際、「日々のごはんが楽しみだった」という経験から、ミドウにはおいしい賄いが食べられるキッチン付きスペースも完備した。

小山氏にとって、ワイン造りは「趣味」ではなく「ビジネス」だ。だからこそ収益を上げ、雇用につながる仕組みを模索している。収穫ボランティアは、その入口として機能しながら、地域とともに持続可能なワイン造りを目指す取り組みでもあるのだ。 

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