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2025.12.12 07:15

エシカルより「よだれ」と欲望が勝つ、代替肉を定着させるヒント

プレスリリースより

プレスリリースより

代替肉は、脱炭素や動物福祉といったエシカルな側面よりも、健康的な食品というイメージが先行している。しかし、体にいいというだけでは代替肉の大々的な普及は難しいと考えた明治大学商学部の加藤拓巳准教授らによる研究グループは、消費者の「よだれ」を引き出す新たな商品コンセプトを打ち立て、その効果を実証した。

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日本では消費者の環境意識が高まり、「自身の購入行動における倫理的妥当性を考慮する姿勢」が見られると研究グループは言う。しかし、エシカル商品の重要性は十分にわかっていながら「自らの価値を損なう商品を好まない」のが現実。倫理性や社会的意義という利他的動機は、利己的動機にかなわないということだ。

どんなに環境によく動物を殺さずに済むとわかっていても、高くて美味しくないものを我慢して食べるのはゴメンだというのが正直なところだろう。

研究グループは、日本の食品業界は「バーガーショップでメニューを選ぶ際の『お腹いっぱい食べたい』という消費者心理を捉えきれていない」と指摘する。そこで、エシカル商品であっても利己的動機に訴えかけ、「よだれ」を引き出す価値設計として、「代替肉は低カロリー・低脂肪のため、量を多く食べられるという満腹感を訴求する利己的動機の商品コンセプトは魅力を高める」という仮説を立て、実証実験を行った。

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5つのコンセプトとその説明。
5つのコンセプトとその説明。

実験は、20〜60代の1000人を対象にしたオンラインによるランダム化比較試験だ。実験参加者を、比較対象のために何もしないグループ(統制群)のほか、環境配慮、動物福祉、健康、満腹感に訴える5つのグループに分けて、それぞれに対応する商品コンセプトを見せ、代替肉バーガーにどれだけ魅力を感じるかを測定した。

利己的動機、または満腹感に訴えるコンセプトに魅力を感じる割合が有意に大きい。
利己的動機、または満腹感に訴えるコンセプトに魅力を感じる割合が有意に大きい。

その結果は予想どおり、満腹感のある代替肉バーガーというコンセプトの魅力がもっとも高かった。それには、「野菜と穀物のみで作っているので、低カロリー・低脂肪で、たくさん食べても大丈夫です」との謳い文句がついている。

ハンバーガーやラーメンは思いっきり食べたいが、どこか自制心が働く。だから、代替肉バーガーなら我慢しなくていいんだよ、という甘い言葉が突き刺さるのだろう。エシカル商品は大きく普及することで本来のエシカルな価値が発揮される。消費者に選ばれるためには、エシカル商品と言えども「よだれの戦い」から逃れてはいけないと研究グループは訴えている。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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