ベネッセアートサイト直島、企業理念「よく生きる」の具現化の先に

かつて高度成長期の負の遺産を抱えていた海。そこにある直島は、国内外から年間70万人超が訪れる「アートの島」となった。飲食店はかつての1軒から数十軒に増え、コロナ前に実施された2019年の瀬戸内国際芸術祭では経済効果180億円を生み出したともされている。

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経済産業省が新たに立ち上げた「ART & BUSINESS AWARD 2025」で、ベネッセホールディングスは特別賞を受賞した。福武財団と共に展開してきた「ベネッセアートサイト直島」の活動を通じて約40年にわたり地域と向き合い続け、世界的に見ても先駆的なアートの取り組みと、企業理念「Benesse(よく生きる)」を体現する場としての独自性が、5つのカテゴリーの枠を超えて評価された。

社員が「原点に立ち返る場所」

「100人いれば、100通りの幸せがある。そのすべてに寄り添うことが、弊社の企業理念であり社名に掲げる"Benesse(よく生きる)”ということです。それは言葉で説明するよりも、直島を体験してもらったほうが理解していただきやすい」。直島事業を統括するベネッセコーポレーション 直島担当本部長の高橋正勝はそう語る。

香川県直島町は、香川からも岡山からもフェリーでしか行けない、人口3000人に満たない島だ。草間彌生の作品《南瓜》、安藤忠雄設計の地中美術館、古民家などを改修した「家プロジェクト」、ホテルと美術館が一体となったベネッセハウス。さらに近隣の豊島、犬島にもまたがる「ベネッセアートサイト直島」は、ベネッセが福武財団と共に約40年かけて築いてきたものだ。

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「ベネッセアートサイト直島」は、ベネッセホールディングスと福武財団が連携して美術館やアート施設などの運営管理をしている。笠原良二が事務局長を務める福武財団では地中美術館、豊島美術館、犬島精錬所美術館や今年開館した直島新美術館など。ベネッセは、ベネッセハウス ミュージアムやホテルの運営管理を担い、子会社である直島文化村が現地でのオペレーションを担う。

「ベネッセの社員は、社員研修として節目ごとに島へ行く。原点に立ち返る場所なんです」という笠原は、この活動に30年以上携わってきた。

この10年ほどで取引先の企業などを案内することも増えてきた。会社を理解してもらうために、事業を説明するだけでなく直島を見せる。「こんなことをやっている会社です」と体感してもらうほうが説得力があり、話がスムーズに進むのだという。

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文=青山鼓 編集=鈴木奈央 写真提供=ベネッセホールディングス

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