小泉進次郎防衛相は7日未明、沖縄本島南東の公海上空で6日午後、空母から発艦した中国軍のJ15戦闘機が、対領空侵犯措置(スクランブル)を実施していた航空自衛隊のF15自衛隊機に対し、2回にわたって断続的にレーダー照射を行ったことを明らかにした。
戦闘機が使うレーダーには捜索用と火器管制用がある。目標を探す捜索用レーダーは数百キロ先まで照射でき、首を振るように広い範囲に電波を飛ばす。目標が見つかり、さらに近づくと、今度は目標にミサイルを命中させるために誘導する火器管制用レーダーを照射してロックオンする。捜索用と火器管制用では周波数が異なる。収納スペースが小さい戦闘機では、一つのレーダーが捜索用と火器管制用を兼ね、自動的に切り替わる装置もついている。使用する周波数は頻繁に切り替わる。
航空自衛隊の元幹部は、小泉氏がレーダーの種類を明示しなかったのは、自衛隊が中国軍機の使う周波数帯をどの程度把握しているのかを明かさない意図があったのだろうと推測する。相手の周波数帯を知らなければ、ロックオンされたことを知らせる警報音も鳴らすことができないからだ。元空自幹部は「それでも、午前2時という異例の時間帯に会見を行ったことからも、中国軍が使ったのは火器管制レーダーだったのだろう」と語る。「拳銃の引き金に指をかけたのと同じ行為。小泉氏は、非常に危険な行為だとアピールしたかったのだろう」と語る。
中国海軍は7日、防衛省の発表が事実と異なるとし、自衛隊機が危険な行動を取っていたと逆に批判した。中国側の意図はどこにあるのか。複数の自衛隊関係者によれば、中国軍は毎年、5月と11月ごろに集中的に外洋で訓練を行うという。今回、中国軍機が飛行していた空域も従来から訓練で使っていたという。元幹部の一人は「西太平洋に100隻程度が展開しているという報道もあった。規模からみて、11月7日の高市早苗首相の存立危機事態を巡る国会答弁に反発して行動したとは考えにくい」と語る。同時に「以前から決まっていた訓練だとしても、そのなかで日本に対するデモンストレーションを行いたいという思惑が働いた可能性がある」という。
また、多くの中国専門家や自衛隊関係者らが指摘するのが、中国の「忖度文化」だ。政治指導者や軍上層部などの指示がなくても、「立身出世」「忠誠競争」などの思惑から、自らアピールする。外務省元幹部は、先日批判を浴びた中国の駐大阪総領事のSNS投稿もこの一種かもしれないとする。元幹部は駐大阪総領事について「慇懃無礼というタイプの人物。愛国無罪で目立って、あわよくば駐日大使のポストを狙おうとしたのかもしれない」と語る。



