アート

2025.12.11 13:15

儲かればプレイヤーが増える 「MEET YOUR ART」が目指す業界トップの姿

(c)MEET YOUR ART

来場者の6割以上が、音楽やファッションなど隣接カルチャーからの参加者だった。 アートフェアで作品を購入した人の過半数が「初めてアートを買った」と答えた。

2025年10月に天王洲で開催された「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」のデータだ。4日間で5万人を動員したこのフェスティバルを仕掛けたのは、エイベックス・クリエイター・エージェンシー。わずか4年半で、アート業界の構造を揺さぶり始めている。

経済産業省が2025年に立ち上げた「ART & BUSINESS AWARD 2025」で、同社はニューアートビジネス賞を受賞した。アート未接点層の大規模な開拓と、作品売買に依存しない新たなマネタイズモデルの確立、年間50社以上との協業、さらに母体となる大企業の新規事業開発としても傑出している点が評価された。

音楽業界から見たアート業界への違和感

「自分で何か立ち上げるなら何かなと思った時に、やっぱり自分ですごくやりたかったのがアート事業でした」。エイベックス・クリエイター・エージェンシー代表取締役の加藤信介は、エイベックス・グループで新規事業領域を統括していた2020年当時をこう振り返る。

音楽業界でキャリアを積んできた加藤にとって、アートは常に、近くにあった。しかし隣接していながらも、より高度で奥が深く、わかりづらい。ある意味それが憧れを感じさせていた。しかし音楽のプロジェクトで現代アーティストと協働するなかで、両者の業界構造への違和感を抱くようになる。

「アートは音楽に比べて圧倒的にマネタイズポイントが少ない。発信するチャネルもプラットフォームも限られている。気鋭のアーティストと言われていても、持続可能な活動をすることが困難なのだと知り、シンプルにもったいないことだと思った」

逆に言えば、そこにチャンスがあった。大きく動かすプレイヤーがいない。音楽業界で培ったノウハウを持ち込めば、唯一無二のポジションを築ける。「勝てる気がする。めちゃくちゃ面白いし、実現可能性がすごくある」と加藤は考えた。

2020年12月、YouTubeチャンネル「MEET YOUR ART」を立ち上げた。MCは俳優の森山未來。大竹伸朗、名和晃平、宮島達男、隈研吾とアート界を代表する顔ぶれがゲストに名を連ね、紹介した若手作家は200人を超えた。約5年でチャンネル登録者数は8.7万人に成長し、国内最大級のアート専門動画メディアとなった。

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文=青山鼓 写真=山田大輔 編集=鈴木奈央

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