カラスは根に持つが、恩も忘れない
ワシントン大学の研究で得られたとりわけ驚くべき知見は、カラスにおいて情動記憶が働いているらしいことだ。つまり、自分に危害を加えた者への恨みを忘れないだけでなく、好ましいやりとりや、好悪どちらでもないやりとりも記憶にとどめていたのだ。カラスに関して、以下のような無数の事例が記録されていることを考えれば、これはうなずける。
・餌をくれた人間に、ちょっとした「贈りもの(きらきらした物体、ボトルのふたなど)」を届ける
・信頼する人間を、ほかの動物から守る
・自分たちの社会集団に属するメンバーが負傷すると、そのまわりに集まる
・脅威となる特定の人間について、たがいに警告しあう
カラスの記憶に関してひときわ興味深い一面が、社会的な次元での記憶だ。前述の『Proceedings of the Royal Society B』掲載の研究によれば、危険な人間を認識したカラスは、近くにいるほかのカラスにも知らせる傾向があるが、それは、自分がその人間に直接危害を加えられたわけではない場合でもそうだった。この知見は、彼らの学習に、以下の2つのレベルがあることを示唆している。
・直接学習:「この人間が、私に危害を加えるところを見た」
・社会学習:「私の属する集団の仲間に、この人間は危険だと教えてもらった」


