経済・社会

2025.12.08 12:36

複合危機(ポリクライシス)の時代:加速する不確実性の中で人類が直面する課題

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未来学者として活動してきた30年間で、これほど先行きが不透明だと感じたことはない。現在、人類が直面している多くの課題を考えてみよう。ウクライナでの長引く戦争、自動化とAIによる雇用喪失、米国やその他の国々での権威主義の台頭、そして次なる世界金融危機を引き起こす可能性のある潜在的バブルなどだ。

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私たちの目前に到来しつつある未来は、これまで見たことのないものになるだろう。今後10年間の行方を探る著書『Build a Better Future』で説明しているように、このような問題が衝突することで、次なる「ポリクライシス(複合危機)」が引き起こされる可能性が高い。ポリクライシスとは、複数の危機が同時に発生し、相互に作用することで全体的な影響が増幅される混乱のことだ。

個別の危機とは異なり、ポリクライシスは相互に関連した課題が絡み合い、解決をより困難にする。

新型コロナウイルスのパンデミックは、ポリクライシスがどのように発生するかを如実に示した。中国・武漢で発生したインフルエンザウイルスは、急速に公衆衛生上の危機、経済的崩壊、サプライチェーンの混乱、そして社会的動揺へと同時に発展した。

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より最近では、2024年7月19日のクラウドストライク危機は、私たちのシステムがいかに深く相互接続され、そしていかに脆弱であるかを改めて思い知らせる出来事だった。

2024年7月19日、世界中の空港で数千人の旅行者が足止めを食らい、フライトが大量にキャンセルされ、綿密に立てられた計画が混乱に陥った。病院ではさらに深刻な事態が発生した。救急室は患者記録へのアクセスに苦労し、重要な治療や手術が遅れる中、医師や看護師はデジタル障害を回避するために奔走した。

同時に、ATMが機能を停止し、銀行の顧客は取引が凍結され、企業や消費者は決済処理ができないという混乱に直面した。マイクロソフトは数日でシステムを復旧させたが、これは一見孤立したテクノロジー障害が世界的な経済混乱、公衆の不満、業務麻痺へと連鎖し、デジタル時代の依存関係がもたらす意図せぬ結果にいかに脆弱であるかを露呈した、ポリクライシスの警鐘だった。

ウクライナ戦争は、ポリクライシスの増幅器の一例だ。地域紛争として始まったものが、第二次世界大戦以来見られなかった地政学的危機へと急速に発展した。欧州がロシア産ガスの代替品を求めて奔走する中、この地域からの小麦輸出が停止し食糧危機が発生し、インフレショックが世界市場に波及した。これに気候変動による災害—カナダの森林火災が米国東海岸を煙で覆い、中東での記録的な熱波、アジアでの極端な洪水—が重なると、今日の危機がいかに結合し増幅するかが見えてくる。

テクノロジーの急速な進歩は、希望と危険の両方をもたらしている。AIと自動化は産業を一変させ、何百万もの人々の仕事を奪う一方、かつてはグローバルな接続性のツールとして称賛されたソーシャルメディアプラットフォームは、誤情報やディスインフォメーションの温床となり、制度への信頼をさらに侵食している。

これに加えて、生物多様性の喪失が食料安全保障を脅かし、地政学的紛争がエネルギー危機を引き起こし、世界市場に衝撃波を送る世界がある。これらのポリクライシスを予測し、その複雑さをナビゲートできる者は、単に生き残るだけでなく、未来で優位に立つだろう。

AIの急速な普及とナショナリズムや孤立主義の傾向を見据えると、世界は個別の問題だけでなく、互いに悪化させ合い、全体的・体系的なアプローチを必要とする深く絡み合った問題に直面している。問題は:私たちは準備ができているのだろうか?

forbes.com 原文

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