筆者は2025年7月、フォーブスへの投稿で、まるで本当に知的能力と感情的能力を持っているかのようなチャットボットをはじめとする「擬人化されたAI(人工知能)」とパラソーシャル(一方的)な関係を築く多くの若者たちに関する懸念について述べた。
パラソーシャルな関係とは、面識のない相手に一方的に、強い感情的なつながりを感じている状態のことだ。その記事の中で議論したのは、アルゴリズムを利用して機微(センシティブ)な情報その他の要素を蓄積することができる擬人化されたAIとそのような関係を築くことは、特に危険なものになり得るということだった。AIと孤独感に関する最近のほかの研究結果もまた、擬人化されたAIについて警鐘を鳴らしている。
それらによると、AIの利用者が多い若年成人の間にも、孤独を感じている人は常に多い。若者たちは孤独感を解消してくれるような本当のつながりを求めるのではなく、その時々の孤独感を和らげるためにAIを使用する。そして、AIは人間とのつながりがあるかのように思わせる見せかけのアイドル(崇拝の対象)になり得る。
AIの社会的利用とメリット
ピュー・リサーチ・センターが2025年6月に発表したレポートによると、米国内のチャットGPTの利用者数は2023年春からの約2年の間に、ほぼ2倍に増加していた。使用したことがあると答えた人の58%が30歳未満だったことは、驚くべきことではない。
成人形成期(18~29歳)の若者たちの間にAIの利用者は多く、ソーシャルドメインにおけるその利用は拡大を続けている。Newsweek.comは2025年3月に掲載した記事で、(マッチングアプリが実施した調査の結果、)Z世代(18~26歳)の約12%は恋愛関係の悩みについてAIに相談したことがあり、15%はデートのプランを立てるためにAIに頼ったことがあると伝えた。筆者もまた、7月にフォーブスに投稿したもう1本の記事で、成長する「AI彼女」関連産業について紹介している。
一方、AIの利用にはすでにその効果が確認されたメリットもある。例えば、オハイオ州にあるシンシナティ大学は、注目すべき9つの利点について報告している。若年成人におけるAIの社会的利用は、コミュニケーションスキルや社会集団へのアクセス、そして創造性を向上させる効果などがあるとされている。そのほか、社会的交流に関する能力の向上にも役立つという。
「まん延」する孤独感
AIの利用には社会的な面でのメリットがあるとされる一方で、若年成人の多くは継続的な孤独感に苦しんでいる。独消費財メーカー、バイヤスドルフが推進する孤独対策のためのイニシアチブ、「ニベア・コネクト」が13カ国の3万人以上を対象に行った調査では 孤独や孤立を感じる人が最も多いのは16~24歳で、その割合は25%にのぼるとの結果が示されている。



