企業が人材の潜在能力の活用について語る時、物事を異なるふうにとらえる能力を指すことは稀だ。だがディスレクシア的思考、つまりパターン認識や大局的な問題解決、創造的な回復力といったディスレクシア(読み書きに困難のある学習障害)を持つ人々に共通する特性こそ、まさにイノベーションと生産性を推進する認知的多様性だ。
ディスレクシアについて啓発するチャリティ団体Made By Dyslexia(メード・バイ・ディスレクシア)と、人材サービスRandstad Enterprise(ランドスタッド・エンタープライズ)が共同でまとめた報告書によると、ディスレクシア的思考はすでに米国経済に約1956億ドル(約30兆円)の貢献をしている。意図的な採用やエンパワーメント、ディスレクシア人材の定着により、この数字は3倍以上の6520億ドル(約101兆円)に増える可能性がある。
Made By Dyslexia創設者のケイト・グリッグスはこう語る。「共同知能の現代において、ディスレクシア的思考は人工知能(AI)の理想的な助手だ。課題を解消し、我々の強みを飛躍的に高める。2022年にLinkedIn(リンクトイン)がディスレクシア的思考を検索可能なスキルとして認定したことは、ディスレクシア的思考を競争上の優位性として再定義した画期的な瞬間だった」。
「世界経済フォーラムとRandstad Enterpriseの調査では、こうした能力は今や世界中の職場で最も需要の高いヒューマンスキルの1つであることが示されている。だがその潜在能力の3分の2はまだ活用されておらず、大半の組織はディスレクシア的思考を持つ人の3分の1しか活用できていない。米国だけで4560億ドル(約70兆円)相当の能力が眠ったままだ」。



