リーダーシップ

2025.12.06 11:00

なぜ仕事は労働者を「搾取するだけで還元しない」のか、リーダーができること

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調査会社ギャラップの最新データは、組織のリーダーが無視できない文化的疲労を示している。従業員の10人に2人しか自社の文化とのつながりを感じていない。組織の価値観に心動かされる従業員はさらに少ない。これは意欲の低下ではなく消耗だ。仕事は何かを与えるより奪う場となっている。

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組織は機械のような精度で成果を測る。生産性、サイクルタイム(一つの工程に要する時間)、スループット(処理能力)。仕事をする人に仕事が何をもたらすかはほとんど測らない。自信、安定、健康、成長、仕事が自分に消耗ではなく強化をもたらすという感覚。何かを与え、何かを得るというこの交換のバランスが失われると、文化は表面的な特徴に成り下がる。価値観は人が大切にするものではなく、傍観するものになる。

この緊張関係が、筆者がディーン・カーターと最近行った対話の主なテーマだった。カーターは使命主導型、経営危機型、急成長型、成長重視型など、実に多様な組織で人事部門を率いてきた。組織はそれぞれ従業員に異なるものを求めていた。

ディーンはパタゴニアで環境への配慮と「職場外の生活が仕事を支える」という信念を尊重した働き方を設計するように求められた。SearsとKmartでは正反対の状況に直面した。つまり、予算は縮小し、組織構造は分断され、使えるリソースはほとんどないという状態で問題を解決しなければならなかった。

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Fossilでは小売の粗利益の縮小に伴い文化の再構築が求められた。Guild Educationでは仕事と学習の両立に没頭し、仕事を通じてキャリア成長を実現しなければならなかった。これらすべての職場に共通するパターンがあった。それは、仕事は働く人からかなりのものを搾り取るが、組織は労働者に返すものをほとんど計算しないということだ。

期せずしてディーンと筆者は土壌から話を始めた。

土壌となるテスト

パタゴニアが自社の事業は地球という故郷を救うことを目的とすると明確にした時、再生可能なビジネス慣行について熟考せざるを得なかった。農業における原則はシンプルで、土壌から取り出す以上の栄養分を土壌に戻さなければならない。

ディーンは同じ考えを仕事に持ち込んだ。「人から奪う以上に与えたらどうなるか」と問うた。この問いは単純に聞こえるが、大半のシステムの実態を見るとそうではないことがわかる。貢献度は法医学のような精度で追跡される。人々が最終的に置かれる状態が考慮されることは稀だ。

ディーンはこの考え方をパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードから得た。シュイナードは企業イメージを洗練することを拒み、階層構造を避け、電話をほとんど使わず、暮らしと仕事が切り離されていない時こそ人は最高の働きをすると信じていた。波のコンディションが良ければ、海に行った。プロセスが形式的なものに感じられると、即座に排除した。これらは単なる癖ではなかった。仕事は人間的で有用、そしてビジネスそのものより大きな何かとつながっているべきという姿勢だった。

パタゴニアの採用プロセスはこの姿勢を反映している。履歴書を末尾から読み始める。大抵の企業が後回しにする趣味・副業・ボランティア活動の部分から目を通すのだ。表面ではなく根源から始める。

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翻訳=溝口慈子

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