リーダーシップ

2025.12.06 11:00

なぜ仕事は労働者を「搾取するだけで還元しない」のか、リーダーができること

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2. 業績評価と能力開発を分ける

週1回の対話こそが、どのような年次の評価より明確な方向性を生む。だが大半の企業は業績や報酬、潜在能力、成長を同じように扱っている。ディーンはこれを「スイスアーミーナイフ問題」と呼ぶ。道具は多いがどれも鋭利ではない。対話は分け、貢献度で1つの対話、能力開発でも別の対話を設ける。そうして初めて成長は仕事そのものへと戻ってくる。

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3. 認識を広げるためにAIを使う

AIはパターンを可視化し事務的負担を減らせるが、リーダーシップは解釈で発揮される。優れたチームは視野を広げるのにAIを活用し、決して意思決定に活用しない。ディーンの言葉を借りれば「AIはより良い意思決定ができるよう助けるべきだ。決してAIに意思決定を任せてはいけない」

4. ブレイクスルーを生み出す人間の能力を守る

好奇心、内省、遊び心が発明を育む。だが多くの職場はスピードと画一性によってそれらを排除する。ディーンは「我々は人間らしさを失わせるよう仕事を設計してきた」と語る。再生可能な文化は思考・探求・実験の空間を休憩ではなくチームの仕事の一部として再構築する。

5. 年次ではなくリアルタイムの分析に変える

筆者の経験では、仕事の引き渡しの遅延、摩擦の増加、不明確な期待値といった初期兆候は常に指標より先に現れる。週次の分析ではこうした変化をまだわずかな段階でとらえる。温度計は数値を示すが、気圧計は圧力を示す、というディーンの区別は有効だ。エンゲージメントが強まるのは自身の長所が生かされ、コーチング対話が行われ、調査が本来の目的、つまり傾聴を果たす時だけだ。

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6. リーダーシップを「退職時の状態」で評価

搾取型の文化は成果に焦点を当てる。再生型の文化は軌跡、つまり以前できなかったことが今できるようになったことに焦点を当てる。獲得した能力こそが真の指標となる。「誰もが来た時より良い状態で去るべき」というのがディーンの基準だ。

人を強化する仕事設計にする

前進の道筋は、リーダーが日々の仕事設計で下す選択に現れる。週次対話が実現するとき、強みが仕事に生かされるとき、システムが人を評価するのをやめて支援を始めるとき、調査が本来の役割を果たすとき、つまりランク付けではなく耳を傾けるときに文化は変わる。

従業員の成果だけでなく働く環境を測る時、人事部門は再び価値を持つ。人事は要求するのと同じだけを補充する仕事であり、人を弱くするのではなく強くするシステムだ。

ディーンは明快に「健全な文化の真の証は、その一員であることで人が成長するか否かだ」と言う。これはシンプルな尺度だ。そして、絶えず変化する仕事の世界で次に何がくるかを明確に示すものでもある。

文化の健全性は、土壌のようにそこから何が育つかで明らかになる。仕事の未来はリーダーが文化を豊かにするか、それとも蝕むかによって決まる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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