高市早苗首相が日本版「政府効率化省(DOGE=ドージ)」とも呼ばれる組織を発足させたタイミングは、最悪と言っていいものだった。というのも同じ週、米国では起業家のイーロン・マスクが率いたDOGEが、ほとんど何の成果も出せないまま、ひっそりと解散していたことが明らかになったからだ。
結局のところ、無際限のカオスをワシントンに解き放てば「効率」は損なわれるし、ドナルド・トランプ米大統領にとっては残念なことに、おそらくコストもかかる。ニュー・リパブリック誌は訃報調の記事でDOGEをこう評している。「DOGEの遺産はあまりに愚かしく、あまりに悲惨だ。連邦政府職員を大幅に削減し、地方事務所の社会保障スタッフも対象にした。国民のデータにハッカーがアクセスしやすくした。USAID(米国際開発局)を解体し、その結果、世界で何十万人もの命が失われた」
DOGEは本当にコストを削減したのか? とんでもない、というのが非営利団体「パートナーシップ・フォー・パブリック・サービス」の評価だ。同団体の試算によれば、解雇と再雇用、生産性の低下、大量の有給休暇取得、訴訟、バックペイ(解雇が無効とされた場合の未払い給与の支払い)、さらに経済学者もまだ把握しきれていない影響を合わせると、DOGEは逆に米国の納税者に1350億ドル(約21兆円)のコストを負わせた可能性がある。内国歳入庁(IRS)は、「DOGE主導」の削減による税収損失は5000億ドル(約77兆5000億円)超に達すると予測している。
マスクは5月末までに事実上、DOGEから身を引いた。彼の突然の退場は、この取り組みがトランプワールド、そしてマスクのブランドにどれほどひどいダメージを与えたかを雄弁に物語っている。テスラの販売台数は世界的に急減した。DOGEが連邦政府を「効率化」どころか非効率化したことも、詳しく報じられた。そもそも「節約」は定量化がめっぽう難しく、したがって見せかけのものになりがちだ。



