日本には本格的なディスラプション(創造的破壊)が必要だ。たとえば日本の生産性は、経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかで下位3分の1内に沈んでいる。かつてはイノベーション(技術革新)が活発だった日本株式会社も、中国の電気自動車(EV)の雄である比亜迪(BYD)やAI(人工知能)の新興DeepSeek(ディープシーク)に対抗する存在を生み出せていない。
日本をもっと効率的にし、国内総生産(GDP)比で260%という政府債務の水準を引き下げる方策を高市に助言するのに、日本版DOGEのような組織は不要だ。2012年、高市が政治の師と仰ぐ安倍晋三首相(当時)は、日本のアニマルスピリットを復活させることで、借り入れを減らして成長をファイナンスする計画を打ち出していた。優先的に取り組む課題として、規制緩和、成果や実力を重視する方向への労働市場改革、スタートアップブームの創出、生産性向上、女性の活躍推進、東京を再びアジアのイノベーションと金融の中心地にすることなどを掲げた。
残念ながら、安倍は言うだけで実行が伴わないことが多かった。翻って高市には、首相に就いた時点で、日本国民の大多数からも支持されている明確で実行可能な戦略がすでに示されている。だが、彼女はその実行に取りかかるのでなく、日本版DOGEのようなパフォーマンス的な仕掛けに興じている。例によって、これはけっして有望な兆しではない。


