宇宙

2025.12.03 10:30

太陽表面に巨大黒点群、地球の直径の10倍の大きさ

NASAの太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)」に搭載された日震磁気撮像装置(HMI)が2025年12月1日に撮影した太陽(SDO/HMI/NASA)

NASAの太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)」に搭載された日震磁気撮像装置(HMI)が2025年12月1日に撮影した太陽(SDO/HMI/NASA)

太陽の表面に、地球の直径の10倍の大きさの黒点群が観測された。時をほぼ同じくして、大規模な太陽フレアが発生した。

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米航空宇宙局(NASA)は黒点について、強烈かつ複雑な磁場が存在する領域で、フレアと呼ばれる大規模な爆発現象の発生源だと説明している。地球周回衛星は2025年12月1日の協定世界時(UTC)午前2時49分に、X1.9クラスの大規模な太陽フレアの発生を観測した。これに先立ち、Mクラスの太陽フレアが数回発生していた。

巨大黒点群「AR 4294-96」

「AR(太陽活動領域)4294-4296」と命名されたこの巨大な黒点群は、直近10年間で最大級のもので、今後数週間にわたり太陽フレアの発生源となるとみられている。ただ、宇宙天気情報サイトSpaceWeather.comによれば12月1日のフレアは、これより規模の小さい黒点群「AR 4295」で発生したものだという。

太陽フレアはオーロラの出現と絡めて語られがちだが、オーロラ現象を生じさせる原因はフレアそのものではない。米海洋大気庁(NOAA)によると、強いX線を放出する大規模な太陽X線フレアは地球の電離層を乱し、地球の昼側(太陽に面した側)で電波障害を引き起こす。今回のX1.9フレアではオーストラリアで電波障害が発生した。

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太陽フレアに伴って放出される電磁波は光速で宇宙空間を伝播し、わずか8分で地球に到達する。大規模フレアの後には「コロナ質量放出(CME)」と呼ばれる突発的なプラズマ(荷電粒子を含むガス)の大量放出がしばしば発生し、地球に磁気嵐を引き起こして、これがオーロラを生み出す。

巨大な黒点群の出現は、太陽活動が今後数週間にわたって活発化する可能性が高いことを示している。

2025年11月12日に米ミネソタ州北部の湖畔で撮影されたオーロラ(Nature Stills by Betty/Getty Images)
2025年11月12日に米ミネソタ州北部の湖畔で撮影されたオーロラ(Nature Stills by Betty/Getty Images)

地磁気活動の活発化が予想される

12月上旬~中旬に地磁気活動が活発化する可能性はかねて指摘されていた。2025年11月はオーロラの発生が相次ぎ、特に11月11日のX5.1クラスの太陽フレア後は顕著だった。このときは帯電粒子が地表まで到達し、地上で宇宙線量が増加する「GroundLevel Event(GLE)」と呼ばれる非常に珍しい現象も起こった。

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この一連の地磁気活動の大半を引き起こした黒点群「AR 4274」は、太陽の自転に伴い現在は地球から見えなくなった。しかし、太陽は地球から見て約27日周期で1回転しており、太陽表面の活発な活動領域はすぐにまた地球側を向く。オーロラ観測という観点からみると、これは極めて重要だ。CMEが地球へ向けて放出されなければ磁気嵐は発生せず、オーロラ出現の可能性も低くなるからだ。CMEが地球に到達するまでには数日を要する。

Spaceweather.comによると、今回出現した巨大黒点群は、NASAの火星探査機パーシビアランスが先週撮影した黒点群と同一の可能性がある。

黒点を観察してみよう

日食メガネが手元にあれば、今すぐ外に出て巨大な黒点群を観察できる。日食メガネの正しい使い方は以下の通りだ。

1. 地面を見下ろした状態で太陽に向き合う
2. 日食メガネを顔に当て、しっかり固定する
3. 頭を上げて、真正面または頭上にある太陽を真っすぐ見る

太陽の表面には、惑星サイズの黒点がいくつもある。強力な磁場の塊である黒点を数えることで、科学者たちは現在の太陽の磁気活動を測定している。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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