数年前、私はマーケティング分野で鋭く、確固たる地位を築いている声に注目し始めた。彼女の仕事は実用的で明確、自信に満ちており、私の共感を呼んだ。彼女がAIの基礎を独学で学び、それらの知見を活用してマーケターが自分たちの仕事を再形成するツールを理解する手助けをしていることに感心していた。
しかし最近、何かが変わった。彼女のコンテンツは膨張している。今や量子コンピューティング、神経科学、地政学について、あたかも専門家の視点から発信している。
彼女がそれらの分野で価値ある考えを持てないと言っているわけではない。しかし、彼女の研究プロセスがどのようなものか分からない。彼女が自分の主張をどのように裏付けているのか見えない。引用もなければ、厳密な検証もない。ただ大きなアイデアが、速いペースで展開されているだけだ。
私の信頼は揺らぎ始めている。
これは個人的なことではない。批判的でさえない。これは一つの信号だ。「この人物は自分の専門領域を超えているかもしれない。注意して進め」と教えてくれる静かな内なる警告である。
彼女は私が「専門領域の肥大化（エキスパート・スコープ・クリープ）」と呼ぶ現象を経験している—生成AIが一見全知のような文章への門戸を開いた今、多くの新興思考リーダーが直面している状態だ。今日、LLMにプロンプトを与えれば、ほぼどんなトピックでも数分で権威のある発言ができる。
しかし、あなたがどう聞こえるかと、実際に知っていることは同じではない。そして読者はますますそれを見分けられるようになっている。
専門領域の肥大化という滑りやすい坂道
新興思考リーダーはしばしば、自分が実際に取り組んできた領域から始める：学び、応用し、試し、失敗し、改良する。そして、一つの成功した記事や投稿がバイラルになると、彼らは勇気づけられる。ドーパミンが放出される。彼らは領域を広げ始める。
「これは私の専門分野に隣接している」とか「ただ声に出して探求しているだけだ」と言うかもしれない。しかし徐々に、彼らの思考リーダーシップは価値よりも量について、深さよりも広さについてのものになっていく。
生成AIの助けを借りれば、この罠に陥るのはこれまで以上に容易だ。朝にCRISPR遺伝子編集の倫理についての記事を書き、昼食までに分散型金融についての記事を書くことができる。自信に満ちた口調と洗練された言葉を使って、もはや知識の基盤に根ざしていないという事実を隠すことができる。AIはコンテンツ作成を容易にするだけでなく、専門性の幻想を加速させる。
専門領域の肥大化：実際より賢く見せることで失うもの
最近のニュースレターで、著者のライアン・ホリデーは読者にAIとの実験について説明している。彼はいくつかの調査を行ったが、その結果に懐疑的だった。
ホリデーはChatGPTを使って歴史的な引用を確認しようとした話を語っている。モデルは自信を持って答えたが、一連の誤った回答を提供した。一次資料—800ページのリンカーン伝記—に立ち返ることで初めて、ホリデーは真実を見つけることができた。その引用は確かに存在したが、それを証明するには努力が必要だった。
それが危険なのだ。生成AIは思考のように見えるものを生み出すことができるが、実際はそうではない。もし自分自身の深い知識の基盤をすでに構築していなければ、その答えが空虚であることに気づかないだろう。AIに頼りすぎて文章を書かせると、あなたの嘘検出器は弱まる。
時間が経つと、自分自身のいい加減な内容さえ信じ始めるかもしれない。
大量機械著作：誰を信頼するのか？
AIと思考リーダーシップに関する私のプレゼンテーションの一つで、私たちが全員経験してきた移行について説明している：ゲートキーパーが管理するコンテンツからブログ圏での大量著作へ、そして今や大量機械著作へ。誰でも発信でき、今や何でも発信できる時代に、私たちは危険な領域に入る。
このコンテンツの洪水の中で、信頼は最も希少な通貨となる。
そしてここにパラドックスがある：AI駆動の世界で信頼を構築する唯一の方法は、頑固なまでに人間らしさを保つことだ。読者はそれを渇望し始めるだろう。彼らは文章の背後にいる人物を探すだろう。彼らは「あなたはどうやってこれを知ったのか？」「あなたは実世界でこのアイデアを検証したのか？」と尋ね始めるだろう。
最高の新興思考リーダーは、これらの質問が尋ねられる前に答えるだろう。彼らは情報源を引用するだろう。彼らは自分の方法を説明するだろう。彼らは自分のニッチに根ざし続けるだろう。彼らは広く浅くではなく、深く掘り下げるだろう。
思考リーダーにとって最も重要な言葉は「なぜなら」
私のコーチングセッションでは、思考リーダーが使える最も強力な言葉は「なぜなら」だとよく伝えている。
「数年以内に、思考リーダーシップの信頼性は、文章の洗練度よりも著者のプロセスの透明性にかかっている」という主張をする場合、あなたは強固な「なぜなら」で続ける準備ができていなければならない。
その「なぜなら」は、あなたの経験、研究、または検証された洞察から生まれるべきだ。正しく聞こえるだけでは十分ではない。あなたは正しくなければならない—あるいは少なくとも、透明に不確かであるべきだ。
これが、私がすべてのクライアントにジャーナリストのように行動するよう勧める理由だ。懐疑的であれ。慎重であれ。具体的であれ。自問せよ：「これは私の領域か？私はこれについて信頼性を持って語るための資格、実体験、または深さを持っているか？」答えがノーなら、おそらくその話はあなたが語るべきものではない。
苦闘の中に留まれ。知恵はそこにある。
ホリデーは再び、私たちが忘れてはならないことを思い出させてくれる：「手書きで物事を書き留めることで、私は資料と取り組み、苦闘することを強いられる...物事を深く理解するようになる。」それはロバート・グリーンが若い頃、何時間もかけて古代ギリシャ語を翻訳し、後の彼のキャリアを形作ることになる忍耐力を育んでいたことだ。
知恵への近道はない。自分の分野に何年も身を置いてきた人の微妙な洞察を届けてくれるプロンプトはない。そしてそれが、新興思考リーダーがまだ目指すべき基準だ。
専門領域の肥大化：AI時代のガードレール
では、あなたがスコープクリープに陥りつつあることをどうやって知るのか？
ここに一つのテストがある：もしその分野の本物の専門家の前で自分の記事を擁護することを恐れるなら、それを公開することを再考すべき時かもしれない。
もう一つ：あるトピックについての「専門知識」が、過去48時間以内にAIツールがあなたに教えたことから主に来ているなら、あなたはそのトピックについての思考リーダーではない。あなたは思考の繰り返し者だ。
そして最後に：もしあなたのAI生成コンテンツが、バズワードと定型文で満たされた他のすべてのブログ投稿のように聞こえ始めたら、あなたはリードしているのではない。ただノイズを増やしているだけだ。
最後の言葉：スコープクリープに抵抗せよ。深く掘り下げるか、諦めるか
今後10年間で最も成功する新興思考リーダーは、あらゆることについて書く人々ではないだろう。彼らは何かについて—揺るぎない明確さ、証拠、深さを持って—書く人々だろう。
彼らは賢く見せようとする衝動に抵抗し、代わりに賢くなるための努力をするだろう。
彼らはドーパミンよりも規律を選ぶだろう。
そして彼らは信頼を勝ち取るだろう—最も多く発信したからではなく、最も信頼性の高いものを発信したからだ。
