欧州

2025.12.02 10:00

ロシアの石油収入が11月に激減 財政圧力が深刻化

ロシア国営石油最大手ロスネフチの原油タンク。2016年1月24日撮影(Getty Images)

ロシア国営石油最大手ロスネフチの原油タンク。2016年1月24日撮影(Getty Images)

ロシアの石油・天然ガス収入は、長らく同国最大の経済的強みの1つだった。だが、エネルギー収入への依存は、今や最大の弱点となりつつある。ロシアのエネルギー収入は11月に急減した。これは軍事費が増大する中で、制裁や原油価格の下落、為替変動が重なり、ロシア政府の財政を圧迫している実態を浮き彫りにしている。

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最近の推計によると、ロシアは11月に石油・天然ガスから約5200億ルーブル(約1兆円)の収入を得るとみられている。これは前年同月比で35%の減少となり、前月と比較しても大幅な落ち込みを示している。連邦予算の約4分の1をエネルギー収入に頼っているロシア政府にとって、これだけの縮小は即座に財政の圧迫につながる。

縮小する石油・天然ガス収入

1~11月期のロシアの石油・天然ガス収入の累計額は1020億ドル(約16兆円)と推定されており、前年比で約22%の減少となる。依然として相当な金額ではあるが、ロシアの予算は安定的で予測可能なエネルギー収入の流れを基に構築されている。その予測可能性が損なわれると、財政構造全体が脆弱(ぜいじゃく)になる。

エネルギー収入は、単に政府の日常的な運営資金を賄うだけのものではない。防衛費や社会計画、地域移転、長期的なインフラストラクチャー整備の基盤となる。この収入源が長期的に低迷すると困難な選択が迫られることになり、時間の経過とともに影響は顕在化していく。

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価格下落と為替の逆風

ロシアの輸出収入に対しては、複数の力が同時に働いている。最も明白なのは価格だ。ロシアが指標とするウラル原油は、世界の基準価格に対して大幅な割引で取引されている。11月には国際指標の北海ブレント原油との価格差が約23%にまで拡大し、過去1年余りで最大となった。一部では1バレル30ドル台半ばまで下落し、2022年の価格暴落以来の最低水準となった。

原油価格の下落だけでなく、為替の影響も深刻だ。ルーブル高は、輸出で得た1ドルが予算の段階でルーブルに変換される額が少なくなることを意味する。すなわち、ロシアはドル建て価格の下落と、その収入の国内換算額の減少という2つの打撃を同時に受けているのだ。

制裁による影響

制裁は、ロシアが原油の市場価格を最大限まで引き出す能力に対する構造的な制約として機能している。ロシアの2大石油企業であるロスネフチとルクオイルに対する制裁により、同国の石油輸出は複雑な物流を余儀なくされ、買い手を引きつけるために大幅な値引きを迫られている。石油の供給が継続する一方で、国際市場でのロシアの価格支配力は著しく低下している。

ロシア産原油の割引はほぼ恒常化している。この変化が重要なのは、たとえ世界の原油価格が回復したとしても、ロシアの長期的な収入の可能性を再定義するからだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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