支出の増加と収入の減少
政府支出が戦時水準で固定されたままの状態が続く中、収入は減少している。防衛費と国内治安維持費が連邦予算に占める割合は拡大し続けている。エネルギー収入が減少すれば、支出を賄う資金調達は次第に困難になっていく。
ロシアには短期的な手段が残されている。過去の原油価格高騰期に蓄積された準備金の引き出しだ。また、国内借入を拡大することもできる。しかし、いずれも費用が伴う。準備金は有限であり、借入の増加は国内の信用市場に圧力をかけ、経済活動を鈍化させる恐れがある。
世界のエネルギー市場への影響
ロシアは依然として世界有数の石油・天然ガス輸出国であり、その財政的圧迫は国境を越えて影響を及ぼしている。収入の圧迫にさらされている国は、国際市場にさらなる下落圧力をかけるリスクを冒してでも、価格低下を補うために生産量を最大化する動機が働くかもしれない。あるいは、過去と同様に石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国から成る「OPECプラス」との連携を強化し、価格支持に動く可能性もある。いずれの選択も、世界の供給動向に不確実性をもたらす。
投資家が注目すべき点
投資家にとって、11月のロシアの収入の急激な減少は、制裁強化以降最も深刻な局面で、同国の回復力が試されていることを明確に示している。貿易の流れを変更し、代替決済システムを構築するといった適応の初期の数年間は、根底にある財政的圧迫の一部を覆い隠していた。現在は、大幅な値引きや上昇するコスト、不利な為替変動が重なって悪影響を及ぼしている。
ロシアは依然として毎月数十億ドルを石油と天然ガスから得ている。だが、その動向はもはや好ましい状態ではない。現状が続けば、ロシア政府は財政的緩衝を保つか、高水準の支出を維持するかという、ますます困難な選択を迫られることになるだろう。
エネルギー市場では、このような圧力がかかっている状況が静かに進行することはまれだ。財政の圧迫が長引くほど、生産政策や輸出、世界的な価格動向に目に見える形で影響を及ぼし始める可能性が高まる。


