こういう部下を評価したり、抜擢したりしてもいいものか。私の答えはノーです。もっというと、ある程度のところまでは任せられても、それ以上は任せられない、といったほうがいいかもしれません。結果的に、周囲が困るからです(私も何度もそういう人を高く評価してしまうという失敗をしてきました……)。
もちろん数字を残した部分は評価して、ボーナスなどを上げてもいいと思います。しかし、間違っても人の上に立たせたり、昇進させたりしてはいけません。西郷隆盛の言葉に「功ある者には禄(金銭)を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」というものがありますが、まさにその通りだと思います。
組織では、ポジションが上になればなるほど、求められる能力は「スキル系」の能力よりも「人格系(徳)」の能力が大きくなっていきます。人間性が大切になるということです。「スキル」の部分は、それが得意な部下に任せればいいのです。
そもそも人間性がちゃんとしている人でなければ、大勢の部下をとても委ねられません。むしろ、スキルは多少足りなくても、徳や人間性のある人材のほうが必要になる。部下が「ついていきたい」と思ってくれる人は、そういう人でしょう。
「to do good」よりも、「to be good」になりなさい
経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、「to do good よりも、to be goodのほうがより大切である」といった意味の言葉を残しています。
「to do good」とは、行いが正しいこと。「to be good」とは、人間性そのものが良いという意味です。仕事はできるけれど、人間性が足りない人というのは、まさにここでの「to do good」だと私は思います。
ただ結果を出すためであれば、「to do good」で十分なのかもしれない。でも、そこから一歩踏み出して「to be good」を目指すべきだ、ということです。
例えばスターバックスに勤めているのであれば、ただ仕事をこなすだけでは、「to do good」のレベルです。本当に求められているのは、豊かな人間性を持って、自然にスターバックスのミッションやバリュー(価値観)に沿った良い仕事をすることです。これこそが、「to be good」です。


