会社の経営陣や上層部が会議室で決めたことと、現場で起きていることは、しばしば食い違う。その距離をどう埋めればいいのか。スターバックス コーヒー ジャパンやザボディショップでCEOを務めた岩田松雄さんは、「常に立場の弱い、現場の味方をするくらいでちょうどいい」と語る。
現場に行かなければ見えないこととは何か。岩田さんが実践してきた具体的な手法とは? 51の考え方にまとめた『新版「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
自分に近い人ほど厳しくする
私は現場を常に意識してきましたが、これにははっきりとした理由があります。
まず、現場はまさに会社を支えている場所だからです。付加価値を生み出す「火花が散る瞬間」は現場にこそあるのです。
そしてもうひとつ、従業員すべてと等距離に接したい、という思いを強く持っていました。お店のアルバイトでも役員でも、等距離で接すべき仲間です。しかし、役員は毎日のように顔を合わせますが、現場の人たちはそうではありません。
等距離に接したいのなら、近づく意識を強く持っておかないと、どんどん遠くなってしまいます。だから、現場を重視することでバランスを取ることができるわけです。常に立場の弱い、現場の味方をするくらいでちょうどいいのです。
私は、現場には優しく接しますが、自分に近い人ほど厳しく接することも意識していました。
残念なことに、ポジションが上がれば上がるほど、現場を軽視したり、現場感覚が弱くなったりする人が出てくるのも事実です。だから、現場の人たちは守ってあげないといけません。社長の自分がサポートをしてあげないと、という意識も強かった。



