米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は今月、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、AI(人工知能)の競争で中国が勝つとの見方を示し、波紋を呼んだ。中国では電力供給能力が拡大しているほか、米国のような規制上のボトルネックがないというのがその理由だ。フアンの予測が当たるか外れるかは別として、彼の発言はAIの競争がいよいよ熱を帯びていることをうかがわせた。
言うまでもなく、AI分野で現在、最大のプレイヤーは米国と中国だ。いずれの超大国も、いまも発展中のこの産業で主導権を握った国が、向こう数十年にわたり世界標準や情報収集、国防、商取引などさまざまな分野に影響を及ぼす可能性が高いことを理解している。
筆者の見るところ、AIの主導権争いを左右する要因は次の3つに集約される。半導体、電力、そしてサイバーセキュリティーだ。
最速の半導体をめぐる争い
AIモデルに関しては、米国が支配的な地位にある。いまからちょうど3年前にAIチャットボット「ChatGPT(チャットGPT)」をリリースしたオープンAIをはじめ、アンソロピック、グーグル、メタといった米国企業は、純粋な性能と世界的な影響力の点で競合他社を大きくリードしている。
だが、中国は多くの投資家が認識している以上のスピードで差を縮めている。
DeepSeek(ディープシーク)、アリババ、Moonshot AI(ムーンショットAI、月之暗面)といった中国企業は、高性能チップへの依存度を抑えつつ競争力のある性能を発揮する、高効率のモデルを開発している。中国勢はオープンソースソフトウェア(OSS)にも力を入れており、これは世界的な普及を加速させると見込まれている。
中国の本気度は特許の状況にも表れている。米スタンフォード大学の2025年版「AIインデックス・リポート」によると、いまではAI関連の特許のおよそ70%が中国発となっている。米国の割合は14%ほどとなっており、2010年以降、おおむね低下傾向にある。
もちろん、すべての特許が商業的成功につながるわけではないものの、その国が何を優先しているかを示す早期の指標にはなる。中国はAIの研究開発で世界的な中心地になることを目指しており、そのために利用可能なあらゆる手段を講じている。



