新たな最前線、サイバーセキュリティー
米中AI競争の第3の戦線は、デジタルセキュリティーだ。サイバーリスクはここ1年で、世界がかつて経験したことのないほど劇的に高まった。
AIチャットボット「Claude(クロード)」を提供するアンソロピックは最近、中国とつながりのあるグループが、AIエージェントを用いてスパイ活動全体を行った初の記録例を公表した。このAIは偵察からデータ抽出まで、すべての任務をこなしていた。アンソロピックによれば、人間のオペレーターは攻撃者というよりは監督者のような役割を果たしていたとみられ、おそらく高度なプログラマーではなかった。約30のターゲットが攻撃を受け、ほとんどの任務はAIが独力で完了していたという。
米国のサイバーセキュリティー企業は、リアルタイムで脅威に対応できる防御用AIエージェントを開発している。パロアルト・ネットワークス(9月30日時点で当社の防衛テック上場投資信託にも組み込まれている)は、プラットフォーム全体に生成AI機能を統合し、エージェントベースのツールを展開している。同社は買収による事業拡大も進めており、このほどクラウドネイティブ型オブザーバビリティー(外部出力データからシステム内部の状態を推測・理解し、問題点などをリアルタイムで把握する仕組み。可観測性)プラットフォームの米Chronosphere(クロノスフィア)を33億5000万ドル(約5240億円)で買収すると発表した。
サイバーセキュリティーは緊急性の高い課題だ。米IBMの調べによると、米国での今年のデータ漏洩による損害額は平均1020万ドル(約16億円)と過去最高を記録し、世界で最も高額になっている。
まとめ
米中のテック競争はAIの今後の方向性を決めるものになると筆者は考えている。AI分野では両国とも動きが速く、その技術は少なくともインターネット草創期以来、目にしたことのないスピードで進化している。今回述べたテーマに関連するいくつかの企業に、わたしたちが長期のポジションを保有しているのもそのためだ。
いつもどおり、好奇心を持ち続け、常に最新の情報を得るようにしたい。


