逆にいうと、少子高齢化などを背景にして、徹底的に人と向き合い、働く人に対する尊厳がある場所でなければ、もはや会社として目立った価値が出せない時代になっている。
かつての日本には、目の前の仕事をこなすだけで自動的に給料やステータスが上がっていく時代があった。高度経済成長期は、国全体が右肩上がりに成長していたからだ。それこそ1980年代に栄養ドリンクのCMで流された「24時間戦えますか?」というキャッチコピーは、まさにそんな時代性と盲目的な働き方を象徴している。
仮に、頭を使って考えたり、クリエイティブなものを創造したりする仕事の人が24時間働いたなら、創造性からどんどん遠ざかっていくはずだ。もちろん、当時は別のつらさがあったと思うが、ただ目の前の仕事をやるだけで給料が上がっていくのなら、ある意味では楽な面も多かったのだと感じる。
従業員の平均給与を469万円から490万円にベースアップ
yutoriのような会社は、そうしたもともと用意されたような仕事がなにもなく、自分たちで仕事を生み出していくことが前提となる。
だからこそ、一人ひとりが常に本気で仕事に向き合い、必死になってものごとを考える必要がある。表面的なスキルや学歴などのパーツだけで人を集めても、クリエイティブなものはまったく生み出せないだろう。
そして、同じことが、いまほぼすべての企業に求められていると思うし、経営はますます厳しい時代になっていると考えている。
もちろん、yutoriでは、社員のみんなに待遇面でも最大限リスペクトを表している。社員の平均年齢は25.7歳で、上場企業でも非常に若い部類だが、2024年7月分から、社員のベースアップ(給与水準の引き上げ)を図り、従業員の平均給与を469万円から490万円に増加させた。
年齢や学歴は関係ない。「好き」という熱狂と才能があれば、それに見合った給料を支払い、より力を発揮してもらえる場を提供するのが会社の使命だと考えている。
yutoriで配信しているYouTubeチャンネル「ゆとらない日々 アパレル企業の裏側」では、評価面談や幹部会議の様子などもオープンにしている。そこでは、先の評価基準などに従って社員にフィードバックしていくのだが、僕自身は、より本人たちの内面をえぐるようなかたちでコミュニケーションしている。そうして、社員のみんながいまどんな状態にあるのか、どんな見方や考え方をしているのかを洞察していく感じだ。


