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2025.12.01 09:50

地方から若手が消える 「仕事はあるのに人がいない」正社員不足の深刻

Getty Images

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「求人を出しても応募者がいない」。地方の中小企業から、こんな悲鳴が聞こえてくる。人手不足が叫ばれて久しいが、働き方改革が進み、DXが浸透した今でも、この問題は解消される気配がない。それどころか、地方と都市部の格差は広がり、若手人材の流出という構造的な問題が企業経営を圧迫している。

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帝国データバンクが全国2万5111社を対象に実施した調査から、正社員不足の高止まりが続く実態と、その背景にある地方企業の深刻な苦境が浮き彫りになった。

正社員不足は51.6%で4年連続の高止まり

2025年10月時点で正社員不足を感じている企業は51.6%に上った。前年同月比でわずか0.1ポイントの減少にとどまり、改善の兆しはほとんど見えない。

業種別に見ると、深刻さはさらに際立つ。「建設」が70.2%でトップとなり、「情報サービス」が67.7%で続いた。建設業からは「職人不足が進むと受注を控えざるを得ない」、情報サービス業からは「案件はあるが、スキルマッチする人材がいない」という声があり、仕事があっても受注できないという矛盾した状況が続く。

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一方、非正社員の不足率は28.3%と、前年同月から1.2ポイント減少した。特に飲食店では前年比10.9ポイントも改善しており、DXやスポットワークの活用が功を奏しているようだ。

地方企業が直面する若手流出

数字以上に深刻なのは、地方企業が抱える構造的な問題だ。「若い人材は大手企業へ。求人を出しても応募者がいない」という地方企業の声が示すように、若手の流出が止まらないという現状がある。

他の地方企業からも「案件は首都圏から来るが、スキルのある人材がおらず受注に至らない」という嘆きが聞かれる。

調査では、若手人材が首都圏に流出するなか、地方を中心にスキルのある正社員の採用が難しく、今後も人手不足の高止まりが続くと分析している。

倒産件数も過去最多を更新

人手不足は企業の存続にも影響を及ぼしている。2025年1月から10月までの「人手不足倒産」は359件に達し、すでに2024年通年の342件を上回った。3年連続で過去最多を更新する見込みだ。

仕事はあるのに、人がいない。この状況が続く限り、正社員不足の高止まりは解消されないだろう。問われているのは、賃金や待遇だけではない。若手が「ここで働きたい」と思える魅力を、地方企業や地域全体でどう作り上げていくか。その答えを見つけない限り、この構造的な人材不足は続いていくのではないだろうか。

【調査概要】
調査期間:2025年10月20日~10月31日
調査対象:全国2万5111社(有効回答数:1万427社)
調査方法:インターネット調査

出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)」より

文=池田美樹

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