ニューヨーク、トロント、ロンドンに拠点を持つ戦略的コミュニケーション企業CLP Strategiesのマネージングパートナー、ブライアン・キャッテル氏。
企業は長年にわたり、自社のビジネスに直接影響しない問題についても見解を持つよう圧力を受けてきた。しかし、2025年は前例のないレベルの政治的分断をもたらし、企業がこうしたコミュニケーション上の課題に対処することがかつてないほど困難になっている。
多くの企業が直面している問題は次のとおりだ。潜在的な顧客や従業員の大多数を疎外することなく、信頼性と一貫性をどのように維持するのか？
企業が直面するジレンマ
今日、大企業、そして多くの中小企業でさえも、気候変動から言論の自由、AIの倫理に至るまで、あらゆる問題について公の場で立場を表明することが期待されている。彼らの行動と発言は、かつてないほど厳しく精査されている。
例えば、ディズニーが最近、保守派活動家チャーリー・カーク氏に関する発言を受けて深夜番組司会者ジミー・キンメル氏を放送から降板させた決定は、メディアの大騒ぎを引き起こした。右寄りの支持層はこの決定を称賛した一方、政治的スペクトルの反対側にいる人々は、同社が政府の圧力に屈し、言論の自由に打撃を与えたと非難した。
数日後、ディズニーはキンメル氏を復帰させた。もちろん、この急転直下の方針転換は、さらなる怒りと称賛を招いたが、今度は逆方向からだった。
これは確かに極端な例だが、今日多くの企業が直面している広報上の課題を浮き彫りにしている。それは英国の詩人ジョン・リドゲートに帰せられる有名な言葉に要約される：「一部の人々をいつも喜ばせることはできるし、すべての人々をある時は喜ばせることもできるが、すべての人々をいつも喜ばせることはできない」。
最近企業が躓いた他のシナリオには、政治的な炎上の後に方針を撤回した消費者ブランドがある。例としてはバドライトや、最近ではクラッカーバレルレストランチェーンが挙げられる。一方、企業の大胆なESG（環境・社会・ガバナンス）に関する声明が実際の事業運営と矛盾しているように見える場合、「グリーンウォッシング」と非難されるリスクもある。
時代の重要な問題について沈黙を守れば、企業は無関心だと思われ、存在感の低下や低レベルの不満を招くリスクがある。しかし発言すれば、鋭く、潜在的に非常に有害な反発を招くリスクがある。
このようなコミュニケーション上の失策がもたらす被害には、株価の変動、従業員の活動主義や離職、規制当局からの信頼喪失、そしてソーシャルメディアでの急速な反発が含まれる。現在ではこれらはAIによる要約や投稿によって増幅される可能性がある。
では、企業はこのような罠をどのように回避できるのだろうか？
今日の分断された環境をナビゲートする
企業がこの地雷原を安全に通り抜ける方法はある。測定され、規律正しく、データに基づいた広報アプローチは、この課題を信頼、明確さ、長期的価値を構築する機会に変えることができる。
最も成功している企業は、本物で一貫性があり、長期的な価値観のフレームワークを作り出している：
• 本物であることは、長期的なビジネスモデルと企業文化に根ざしていることから生まれる。
• 一貫性は、取締役会でも、タウンホールでも、プレスリリースでも同じメッセージを発信することから生まれる。
• 長期的な価値観とは、センセーショナルな見出しのすべてに反応するのではなく、時間をかけて深く考え、分析することを意味する。
サプライチェーンの人権に公に取り組む物流企業を考えてみよう：この問題は企業の中核的な商業的使命と一致し、党派を超えて擁護できる。
このコミュニケーションプロセスにおいて、内部の連携は絶対に不可欠だ：従業員は、世界の残りの人々が理解する前に「なぜ」を理解しなければならない。
広報チームは、これらの原則を組織が必要に応じてリアルタイムで展開できるメッセージング戦略と資料にまとめる上で重要な役割を果たす。さらに、広報機能は各エンゲージメントに情報を提供するフレームワークを構築できる。
企業はいつ関与すべきか？客観的に適用できるフィルターを開発しよう。その問題は事業に重要か？それは我々の価値観と関連しているか？それは我々のステークホルダーに直接影響するか？
関与する際は、明確で平易な言葉を使い、聴衆の大部分を疎外するような専門用語を避けること。トーンは原則に基づいたものであるべきで、決して党派的であってはならない。
最後に、チャネルは本当に重要だ。メディアに向かう前に、従業員とのコミュニケーション、顧客や投資家へのブリーフィングを優先するのが良い。しかし、すべての垂直方向で発言されることの一貫性を保つこと。
結論
企業が鋭いジレンマに直面していることは間違いない：分断化により企業の発言はかつてないほどリスクが高まっているが、沈黙も実行可能な選択肢ではない。
本物で一貫性があり、関連性のある価値観に根ざしたコミュニケーションを展開する企業は、今日の環境を長期的な信頼を構築する機会に変えることができる。それは立場を取ることではなく、いつ立場を表明するのが正しいかを判断することだ。
