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2025.11.26 09:00

AI向けの莫大な借り入れが「次の信用収縮」を招きかねない理由

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多くの年金基金や大学基金はより柔軟な運用方針を採用しているものの、結局、同様の事態に直面することになる。たとえばシカゴ警察官年金・給付基金(運用資産46億ドル)は、その債券戦略でひとつの業界への投資が占める割合を25%までに制限している。こうしたルールは、特定の発行体や業種から債券が一度に大量に市場へ流れ込もうとする際に、「速度制限」として機能する。上限に達した投資家は、新たな購入のために既存の保有分を売却するか、新発債の購入を見送るしかなくなる。

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これまでのところ、制限は破られていない。配分上限3%のiシェアーズ投資適格社債ETFの場合、オラクルの比率が約2%で、AI分野の主要な借り手でほかにウエートが1%を超えているのはメタだけだ。

AIインフラの大規模構築に向けた資金の一部は、プライベートクレジット(ファンドなどによる直接融資)で賄われるとみられていた。しかし米資産運用会社ウェリントン・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、ブリジ・クラナによると、その見方は後退している。AIと無関係な分野で発生した早期のデフォルト(債務不履行)が貸し手の慎重姿勢を強めているほか、分散投資ルールのために、どのファンドもデータセンター関連へのエクスポージャーが制限されているからだ。同社のアナリストらは「私募で吸収できるAI関連支出は2000億〜3000億ドル(約31兆〜47兆円)程度」(クラナ)と見積もっているといい、これでは必要な額に遠く及ばない。そのため不足分の負担は公募債市場に戻っており、すでにスプレッドが動き始めている。

クラナはまた、大半のポートフォリオ構造でリスクの相関性が見えにくくなっているという問題も指摘する。集中度に関するガイドラインでは通常、テーマではなく借り手企業が対象になっている。たとえば、ファンドはオラクル、アルファベット、メタ、マイクロソフトのポジションを各3%ずつ保有することで、企業単位では分散できるかもしれない。だがこの場合、実際にはAIリスクに著しく偏ったポートフォリオになってしまっている。ルール上、これらの企業は別個に扱われるわけだが、本質的なエクスポージャーは同じであり、AIコンピューティングとインフラへの巨大なひとつの賭けになってしまっているのだ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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