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2025.11.26 09:00

AI向けの莫大な借り入れが「次の信用収縮」を招きかねない理由

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これらの大手テクノロジー企業は必ずしも借り入れを必要としているわけではない。ビッグテックの大半は数百億ドル規模のキャッシュを保有しており、バランスシートは健全で、信用格付けは投資適格級だ。たとえばメタは、米証券取引委員会(SEC)への最新の届け出によると現金および短期証券を445億ドル(約6兆9600億円)保有する。アルファベットとアマゾンの場合、その額はそれぞれ1000億ドル(約15兆6000億円)近くにのぼっている。

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フライアーの発言が反発を招いた背景にもこうした状況がある。

AI関連債への投資家の需要が減退すれば、これらの「AI成長」企業は市場水準よりも高い金利を支払うか、契約条件を緩くする判断を迫られる可能性がある。実際にそうなった場合、借り入れコストが全体的に上昇する公算が大きい。実のところ、これらの優良企業はすでに負担が増している。英資産運用会社ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのアナリストらによると、アルファベットとメタは最近の社債発行で、いずれも以前の起債時より10〜15ベーシスポイント(bp、0.1〜0.15%)高い「明確なプレミアム(上乗せ金利)」を払わされた。また、メタの社債が11月に売り出されたあとにはオラクルの社債への需要がしぼみ、償還期限が2055年のものは米30年物国債とのスプレッド(利回り差)が1週間で11ベーシスポイント(0.11%)広がった。ファンドは新発債を購入するために保有分の既発債を売却する可能性もあり、これは市場全体の利回りを押し上げ、流動性を低下させるおそれがある。AIブームの様相を呈している状況は、広範な信用収縮につながりかねないということだ。

米金融サービス会社DAデビッドソンでテクノロジー分野の調査を統括するギル・ルリアは、債券市場はAI関連の借り入れが年間数百億ドル規模なら対応できるものの、数千億ドル規模に膨らむとほかの借り手をクラウディングアウト(押しのけ)始めるとみている。「債券市場全体が、このきわめて限定された投資分野にさらに集中していくことになるでしょう」

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社債投資家は、分散投資によって自分たちは守られると想定している。だが、社債を発行する企業側の多くが同じビジネルモデルに依存している場合、分散は機能しなくなる。米格付け大手S&Pグローバル・レーティングスのマネジングディレクター、デービッド・ツイとナビーン・サルマらは、AIの計算能力への需要が鈍化した場合、テクノロジー・メディア・通信(TMT)分野の社債市場全体が同じ方向に動く可能性があると指摘する。ひとつの分野がショックに見舞われれば、それはほかの分野にも波及しかねない。いくつかに分散させていたと思っていたリスクが、実はひとつの大きなエクスポージャーと化してしまっている可能性があるからだ。

信用市場は過去にも同じような波を経験してきた。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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