パーパスは、「見つかる」ものではなく、構築すべきもの
心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンの両氏は、自己決定理論を通じて、人間のモチベーションは、自律性、有能感、関連性をよりどころとして成長することを示した。このうち関連性とは、自分がやっていることが、より大きな目的につながっているという感覚だ。パーパスは、単一の知見の中に見いだされるものではない。反復によって成長していくものだ。
部下が成果を実感できるような仕事の仕組み作りを心がけるリーダーは、パーパスを構築しているといえる。チームミーティングで、顧客から寄せられた声を共有することや、プロセスの変更で日々の業務がスムーズになった事例を紹介すること。プロジェクトに単なる利益追求以上の意味があることを説明すること。これらはすべて、抽象的なパーパスをリアルなものに変えてくれる機会だ。
個々人の持つ性質についても、同じ理屈が当てはまる。パーパスが「見つかる」のを待っているタイプの人は、人生から必要なものを得られていないように感じて、閉塞感を覚えがちだ。対照的に、自分が今やっていることを通じて意味を作り出すことに集中している人は、充実感を覚えやすくなる。この文脈においては、パーパスは天からの啓示ではなく、実践だ。
「見つけるもの」から「作り出すもの」へというこうした発想の転換には、謙虚さが不可欠だ。謙虚さを備えたリーダーは、自身を「真実を明らかにするビジョンを持った人物」と位置づけるのをやめ、「チームの中で共有される意義を育てる庭師」のようにふるまうよう心がけるだろう。
ここで焦点となる問いかけは、「我々のパーパスは何か?」ではなく、「私たちが今日、一緒に働く中で、パーパスを見えるものにするにはどうしたらいいだろうか?」というものになるはずだ。


