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2025.11.30 10:00

AIで「仕事が減る未来」はそんなに暗くない、実行から創造へ──人間が担うべき役割とは何か

Shutterstock.com

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AI(人工知能)が、かつては人間が手と頭を使ってこなしてきた仕事の多くを引き継ぐようになるなか、根本的な変化が起きつつある。人間が労力を注いできたさまざまな仕事が丸ごとテクノロジーに委ねられ、そのあとにはぽっかりと空白が残った。日々の職場を満たしていたいつもの慌ただしさは薄れ、それに伴って、フルタイム職を充実したものに感じさせていた構造も消滅に向かっている。

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やるべき仕事が消えるたびに、その空白を埋めようとする集合的な本能が働く。組織は、これまでの職責範囲を拡大したり、新しい役割を設置したりして、仕事の体裁をとにかく維持しようとする。従業員は、せっせと働いているように見えなければ、自分の職務がとるに足りないものとみなされてしまうと心配する。リーダーは生産性を気にかけ、企業は自社の存在意義を懸念する。その結果、もはや不要な仕事だとしても、職務という器を満たして維持しようと努めることになる。

しかしこうした状況は、より深い問いを突きつけてくる。「私たちが守ろうとしているのは、仕事の構造なのか、それとも仕事の価値なのか」という問いだ。

AIが取り除くのは作業であって、価値ではない。AIによって可能となる未来では、従来の仕事は圧縮されず、再設計されていく。減るのは仕事の数ではなく、「不要な作業」の数だ。やるべきことが減るわけではない。重要性の低い仕事が減り、重要性の高い仕事が増えていくのだ。

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「仕事が減る未来」が始まろうとしている。そしてその影響は、効率性だけにとどまらず、はるかに根本的な変革を促す。

タスクからパーパスへ:AIは人間の仕事をどう再定義するのか

大半の職務設計は今もなお、産業的な論理にもとづいている。監督者が作業を割り当て、従業員がそれを完了し、管理職が成果を測定する。AIと聞くとどうしても、生産性向上のツール、やるべき数々の作業を人間よりも迅速にこなしていく手段だととらえがちだ。しかしAIは、仕事に余力を生み出すだけではない。決断する余地を人間に取り戻させる──文脈を理解する力、微妙な差異を推し測る力、可能性を見いだす力、成果を形作る力といった、人間の価値を特徴づけてきた能力を使うよう求めてくるのだ。

AIエージェント管理プラットフォーム「Wayfound」の最高経営責任者(CEO)で、経済人類学者でもあるタチヤナ・マムートは、「現在、画面の前に座る人間にさせている作業の大半は、概して非人間的な仕事だ」と述べる。筆者が司会を務めるポッドキャスト番組「The Future of Less Work」に出演した同氏は、「AIエージェントは、非人間的な仕事を取り除き、人間が人間ならではの能力に集中できるようにしてくれる」と述べた。

やるべき作業が減ると、目的が明らかになってくる。労働者は、やるべきことを指示されるのではなく、取り組むに値することは何かを、自ら判断しなければならない。その作業の先にあるものを見据え、成果を生み出すための問いに目を向ける必要が出てくる。例えば、「何を解決しなければならないのか」「誰とつながるべきか」「チャンスはどこにあるのか」「どうすれば、より優れたものを設計できるのか」と問いかけなくてはならない。

これにより仕事の焦点は、活動からインパクトへと移る。「指示を実行すること」から「方向性を形成すること」へ、「タスクを実行する存在」から「意義あるものに貢献する存在」へと変わっていくのだ。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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