組織内に新たなクリエイターエコノミーが生まれる
組織外に存在するクリエイターエコノミーによって、人々が自主性とツール、プラットフォームを手に入れると何が起こるのかが明らかになった。そうしたクリエイターは、想像し、実験し、何かを生み出している。それと同じ力学がいま、大規模組織へと入り込みつつある。
AIが基本的な作業を担うようになれば、「人間だからこそできる仕事」があとに残る。例えば判断力や創造力、影響力、ストーリーテリング力、倫理的な判断力、戦略的に物事を見抜く力、関係を構築する力を使った仕事だ。これらは、割り当てられる作業ではない。発揮されるべき能力だ。
これまで指示を受け取る側だった従業員は、価値を創造する存在になる。人間が作業に埋没しなくなったときに一体何が起こるのかを、マムートはこう説明する。「私たちはそこ(埋没した状態)から、自分や自分の精神を解放し、自分がやっていることとその理由を、より俯瞰的に見られるようになります。その結果、ただ指示を受け取るだけの存在でなく、自分が働く企業の成果を共同で創造しているように感じられるようになるのです」
これこそが、組織内クリエイターエコノミーの本質だ。人間と知的なシステムの共同作業であり、人間が指揮し、統合し、仕事の質を高めるようになる。価値は命令階層からではなく、インサイトや判断、新しいアイデアを作り出すクリエイターのネットワークから生まれてくる。
実際には、仕事が減るのではない。仕事の中身が変わるのだ。
AI時代に向けた仕事の再設計
仕事が以前よりも創造的かつ自律的になるなら、それに伴って、リーダーシップも変わっていかなくてはならない。リーダーの役割は、方向性と文脈を示し、信頼を与えることになる。創造性が発揮されるのは、リーダーが摩擦を取り除き、試行錯誤を奨励した時だ。そして人々に対して、新しく解放された能力を、古いやり方をただ加速させるのではなく、人間的な価値を表現するかたちで使う許可を与えた時だ。
自律性はオペレーティング・システムとなる。判断力は、パフォーマンスの指標となる。好奇心は生産性の原動力となる。
仕事の少ない未来は、こうした働き方を可能にしてくれる。優秀な人材は、「働かなくてはならないから」でも「指示されたから」でも「評価されるから」でもなく、「働きたいから」「その会社で働くことが人生の目的を実現する道だから」働くようになる。
それこそが、築く価値のある未来なのだ。


