
「当時、従業員が6名の小さな会社でしたが、それでも先行きも見えずに不安も大きかった。でも時計界の大物経営者であるジャン-クロード・ビーバー(元ウブロ会長)との出会いが、ゲームチェンジャーになった。彼は『危機とは、前進するためのきっかけだ』と教えてくれた。
すべての物事には、ネガティブもポジティブもある。ではそのどちらに焦点を当てるのか。私たちはいつだって、ポジティブに焦点を当ててきた。そういう姿勢をビーバーは評価してくれたんです。
私たちの信条は、『勝つか、学ぶか』。つまり負けることはないんです。だから強くなれるし、より良くなれるのです」
常に前を向き、次なる挑戦に挑むノルケインだが、すでに来年以降のビジョンも明確だ。
「創業してからこの7年間で多くのことを成し遂げました。時には私たち自身が、『これは現実なのだろうか?』と自問する瞬間があります。そのひとつが、サッカースイス代表チームの公式計時パートナーの就任でした。
幼い頃からサッカーを愛し、スイス代表を応援してきた兄弟たちが、突然“公式パートナー”ですからね。それは家族全員にとって素晴らしい瞬間でした。そして2026年は、当社史上最も革新的な年になるでしょう。詳細は話せませんが、期待してください。
さらに次の大きな目標は、2028年に迎えるノルケインの10周年です。我々はこの節目に向けて高い目標を掲げており、現時点では順調に達成に向けて進んでいます。
この目標が達成できれば、ツェルマットで小売業者やメディアを招いた大規模なパーティーを開催し、設立10周年とそれまでの挑戦、そしてこれからの長期ビジョンを掲げ盛大に祝いたい。
時計業界では、100年以上の歴史を持つブランドが多く、歴史がないことが創業当初の課題でした。しかし今やノルケインは、自らの手で、物語と歴史を築き上げている。
私たちの全ての行動は、極めて長期的なビジョンに基づいている。これは私たちの情熱であり、家族がこの挑戦を未来永劫リードしていくのです」
スイスの高級時計産業は、多くのブランドがひしめき合うレッドオーシャンの市場である。しかしノルケインは、その逆境に負けない。優れた製品をつくり、情熱をもってその価値を伝える。その思いが熱狂となってファンをつくっていく。
ノルケインの時計を手にするということは、新しい時計ブランドを応援するという、一種のパトロン活動にもなるだろう。そして時計がもつ情熱がユーザー自身を動かしていく。その熱狂はまだまだ続きそうだ。
トビアス・カッファー◎ノルケイン副社長。1990年、スイス生まれ。時計会社やジュエリーメーカーで実績を積み、実兄のノルケインCEOベン・カッファーに招かれ、2021年5月から現職。主にセールス部門を担当し、世界各地を精力的に回って、ノルケインの情熱を伝えている。


