アジア

2025.11.22 09:00

「トランプの夢」が日本の悪夢に 止まらぬ円安、国力をますます落とす懸念

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円相場がまたしても下落するなか、日本の高市早苗首相はきっと、ドナルド・トランプ米大統領が思うようにいかない国内政治に気を取られ、円安の進行に気づかないでいてくれることを願っているだろう。

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トランプはつい最近、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を解任したいという意向をあらためて示した。トランプがFRBに利下げをさせたがっている理由のひとつは、米国の輸出を後押しするためにドル安にすることだ。

ところが現在、トランプが夢見るような通貨安を享受しているのは日本だ。ここへきて円安が進んでいる理由のひとつには、トレーダーの間で日本銀行が12月18〜19日の会合で利上げするとの見方が後退していることがある。日本の7〜9月期の実質国内総生産(GDP)が前期比の年率換算で1.8%縮小し、高市が日銀は金融政策を現状維持するのが望ましいとの姿勢をにじませるなか、円は下落している。

円安のもうひとつの理由は、大きな地政学的危機を背景に投資資金がドルに殺到していることだ。リスクが高まった時期にドルが買われるのは普通だが、トランプの関税政策や気まぐれな行動全般、37兆ドル(約5800兆円)を超える米政府債務、さらにFRBが利下げモードに入っていることなどを踏まえれば、ドルに下押し圧力がかかりそうなものだ。だが、現状はそうなっていない。

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高市が心配しているのは、こうした状況がトランプに知られ、日本が近隣窮乏化政策に走っていると思われることだろう。折しもスコット・ベッセント米財務長官のチームは、貿易相手国が為替操作をしていないかを調べる半期ごとの報告書を取りまとめているところだ。

高市は10月21日の就任以来、地政学的な状況にかんがみて、トランプの機嫌を損ねないよう細心の注意を払ってきた。日本にとって最も避けたい事態は、トランプによって15%の関税率が再び引き上げられることだ。日本政府が円を切り下げているという認識ほど、トランプを刺激する要因はほかにほとんどない。

高市はまた、トランプが日本に現金での支払いを期待しているらしい5500億ドル(約86兆円)の「契約金」をめぐっても綱渡り状態にある。高市率いる自由民主党政権は、すぐに支払いに応じるべきではないことを理解している。米連邦最高裁が今後、トランプ関税の合憲性について判断することになっているからだ。最高裁が違憲の判決を下す可能性は十分にある。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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