2025.12.20 14:15

バリ島で注目のクリエイティブな村、「ポテトヘッド」とは一体?

インドネシア・バリ島のクリエイティブ村「Desa Potato Head」

生ごみは堆肥化して自前の農園で活用。収穫したオーガニック野菜は、リゾート内の6つのレストランで提供されるほか、孤児院などへ寄付もしている。サステナブルな取り組みをするリゾートは増えてきているが、ポテトヘッドの取り組みはそれらを遥かに凌ぐ、まるでリサイクル事業者の域だ。

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これらの取り組みの全体像を「フォロー・ザ・ウェイスト・ツアー(ゴミのゆくえを追うツアー)」として宿泊者に公開。旅行体験を通じてごみ問題への意識を高める役割も果たす。ゴールは埋立地に送られるごみを、全体の0.5%程度まで削減することだ。

サステナビリティ・ディレクターのアマンダ・マルチェラ氏は語る。

「一番うれしいのは、『このツアーがきっかけで、家に帰ってから小さな行動を変え始めた』とゲストから聞く瞬間です。みなさんには、廃棄物は埋立地に行き着いたときに初めて本当の廃棄物になる、と伝えています。どんなものも少しの工夫で新しい命を吹き込むことができるのです」

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アートで社会課題を「見える化」する

6600枚の古い扉で作られたビーチクラブの外壁とリーナ・クラウスのインスタレーション
6600枚の古い扉で作られたビーチクラブの外壁とリーナ・クラウスのインスタレーション

私が着目したのは、ポテトヘッドがサステナビリティの思想をアートとして表現していること。ビーチクラブの入口では、海岸で回収した5000足のビーチサンダルを積み上げたリーナ・クラウスによる巨大インスタレーションが、広場では河川ごみを素材にしたフトゥーラ2000による高さ6メートルのフィギュアがゲストを迎える。

廃材アートをシンボリックに配置し、アートを通じて来場者にごみ問題の現実を知らせる。自然と意識づけする構造が巧みだ。

スイートの客室
スイートの客室

客室はスイートが洗練されたミッドセンチュリー調でまとまっている一方、スタジオルームは、リサイクル素材を活用した遊び心あふれるデザイン。

568kgの再生プラスチックから建てられたコミュニティ・ラジオ局「ヘッドストリーム」では、地元アーティストやミュージシャンが国際的なDJとコラボレーションし、地域コミュニティの活性化にも一躍買っている。 

食の領域にも独自のこだわりがある。専任ディレクターのもと、デザインホテルによくある“見た目先行”ではなく、自前農園のオーガニック野菜を生かした高品質な料理を提供。なかでもビーガンレストラン「タナマン」は、味・空間ともにレベルが高く、特に朝粥はこれを食べるために泊まる価値がある。 

タナマンで提供される朝粥
タナマンで提供される朝粥
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文=山田理絵

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