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2025.11.21 18:00

幸せとは「常に気分がいいことじゃない」と考えると毎日の幸福が増える

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幸福はゴールではなくプロセス

幸福は、私たちの意識の他のあらゆる側面と同様に、私たちの生物学的進化にその根の一本が編み込まれている。ホフケンは、肯定的な感情は私たちの気づきと行動能力を拡大すると示唆している。それは、かつて私たちの祖先が予測不可能な環境に適応するのに役立った特性である探索や協力、創造性を促す。一方、ネガティブな感情は、目先の生存のためにエネルギーを動員するため、迅速かつ集中的だ。

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進化論的に言えば、ポジティブな気分とネガティブな気分の両方が不可欠だが、この感情システムの半分が他方を支配すると、複雑な事態になり得る。現代の幸福をめぐる文化は、ネガティブな感情を機能不全として扱い、抑制するよう促している。だがもし方程式から不快感をすべて取り除くとしたら、ホフケンの主張によると、私たちが最も不幸になるのに適した条件を作り出してしまうことになる。

喜びだけの人生はもろく、フィードバックから切り離されてしまうだろう。こうしたことから、ホフケンが提案するのは、ポジティブさを追求することではなく、機能的なバランスを養うことだ。つまり、喜びと苦痛が共存できるようにすることだ。

幸福を阻む頑固な障害

機能的なバランスを保つことは、現代社会では明らかに難しくなっている。人間の心は、欠乏と物理的な近接性の下で小さな集団の中で進化した。感情のメカニズムはそのような環境用に調整されたものであり、21世紀の生活の過剰な刺激や豊かさ、抽象化のために作られたものではない。

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ホフケンはこれを進化のミスマッチと呼んでいる。私たちの生物学的デザインは古いままである一方、文化・技術的現実は「不自然」なスピードで変化してきた。ホフケンによると、我々の「幸福の燃え尽き」の主な原因は、標準を超える刺激の存在だ。これは人工的に誇大化された報酬であり、脳の動機づけの回路を乗っ取る。

例えば、かつて野生で採れたある果物は人間に希少な甘味を与えてくれていた。しかし今日では、加工された精製糖はどこにでもある。同様に、かつては承認という一瞬のジェスチャーは部族に含まれることを意味していた。しかし現在では、ソーシャルメディアを1回閲覧するだけで数多くのこの種のサインを目にする。

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翻訳=溝口慈子

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