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2025.11.29 10:00

オフィス復帰の義務化は新たな「ガラスの天井」、男女間の賃金格差が拡大 米国

Shutterstock.com

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米国では、職場におけるジェンダー平等に関して、時計の針は逆戻りしている。

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残念ながら、これは事実だ。男女間の賃金格差は、1960年代以来初めて広がっている──しかも2年連続で。米国勢調査局が2025年9月に発表した2024年のデータでは、男性の賃金1ドルに対する女性の賃金は80.9セントにとどまり、2022年の84セントから下落していることがわかった。

その原因は、いまの職場において、すべての圧力が一挙に高まるような事態が起きたことだ。育児や介護などの家庭内ケアの大部分はいまだに女性が担っているなかで、保育サービスの費用は、手が届かないレベルまで高騰した。しかも、出社回帰(Return to Office:RTO)が義務化されたことにより、仕事を続けるために多くの人が頼りにしていた働き方の柔軟性が奪われてしまった。

コロナ禍の時期に柔軟な働き方を導入した企業が、今ではこれを取り下げ始めている。これにより、昇進する者、後退する者、職場を去る者の構図も様変わりしている。

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「ガラスの天井」はかつて、女性がトップに昇り詰めることを阻む、目に見えない障壁を指す言葉だった。今やこの「天井」は、目に見えるポリシーによって強化されつつある。実際、RTO義務化によって、コロナ禍の時期に進んだ柔軟な働き方に向けた動きは後退している。これにより、最も打撃を受けているのがワーキングマザーであり、性別による賃金格差が再び広がり始めた。

簡単に言えば、以前は「企業文化への回帰」ともうたわれたRTOが、いまや急速に、企業文化を装った新たな「ガラスの天井」になりつつあるということだ。

男女間の賃金格差が広がりつつある

数字は、この状況を如実に物語っている。

RTO義務化は、単に働き方の柔軟性を低下させるだけでなく、女性を職場から追い出している。RTOポリシーが施行されている職場における女性の離職率は、男性の3倍に達する。なかでも最も打撃を受けているのは幼い子どもを抱える母親で、就労率はパーセンテージにして2.8ポイント下落している。1年の上半期にこれほど急激に落ち込むのは、40年以上例のないことだ。

しかも、この傾向はますます強まっている。米国の育児メディア「Motherly」の調査では、ミレニアル世代の母親の半数、さらにZ世代の母親では半数以上が、退職を検討したことがあると回答している。理由としては、ストレスそして保育サービスの利用料が収入を上回っていることが挙げられた。

一方、40年にわたって改善傾向にあった男女間の賃金格差も、静かに拡大しつつある。2024年、男性労働者の所得中央値(メジアン)は3.7%上昇したが、これに対して女性の所得は横ばいだった。数世代にわたる懸命な努力で縮まっていた賃金格差は、ここに来て広がり始めている。

このような不均衡の拡大は、決して偶然の出来事ではない。女性が不利な状況に陥っている理由を理解するには、その背後にある圧力を検証する必要がある。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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