キャリア

2025.11.29 10:00

オフィス復帰の義務化は新たな「ガラスの天井」、男女間の賃金格差が拡大 米国

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先見の明のある企業は、子育て中の従業員を支援するために、以下のようなポリシーを試験的に導入している。

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・仕事のスケジュールに関して柔軟な設定を認めつつ、他の従業員とのコラボレーションを目的とするコアタイムを設ける
・ハイブリッドワークの従業員向けに、昇格枠を設ける
・ケアの担い手となっている従業員への手当てや、ケア目的の有給休暇を提供する

模範を示しているのは企業だけではない。米労働省や複数の州政府が、保育サービスに関する雇用主の費用負担について、税控除を検討している。これが実現すれば、子育て中の従業員にとって現状を変える切り札になり、息の長い就労を促す手段になる可能性がある。

こうした施策はぜいたくな特権ではなく、事業を前進させるための必要経費と捉えられる。いち早く対応策を示した企業は、今いる人材の引き止めだけでなく、将来的な人材の確保につながる手を打ったことになる。

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「仕事の未来」に女性は不可欠

柔軟性のないRTO義務化は退行だ。こうした施策は、すでに女性たちが直面している金銭面での苦境の引き金となっている。

企業が女性従業員を失えば、失うのは従業員の頭数だけではない。組織内に蓄積されたノウハウやイノベーション、信頼を失うことになる。そして失職した女性の側も、生活を担うために不可欠な収入やキャリアアップの勢い、さらには、第一線で働き続けることで得られる長期的な経済的安定を失ってしまう。女性は、後戻りを余儀なくされるたびに、給与は減り、キャリアは停滞し、生涯を通じて累積する賃金格差がさらに拡大する。

企業の上層部は今こそ、「視認できる働きぶり」ではなく、価値創造をベースにして、働き方のモデルを再構築するべきだ。生産性は、オフィスにある読み取り機にIDカードを通したどうかで判断するべきではない。生産性は、成果や、周囲に及ぼす影響、創造性に基づいて計測されるべきだ。

男女平等を求める動きにおける次の最前線が、役員室になることはないだろう。今後は、オフィスへの出社に関するポリシーが焦点になるはずだ。この点を理解している企業が、働き方の未来を定義する。

男女間の賃金格差が増大しているのは、不可逆な流れではない。この流れをひっくり返すことは可能だ。企業の上層部は、退行的な「オフィス回帰の義務化」をやめ、柔軟で包摂的な働き方のモデルを取り入れることで、現在進行中のストーリーを書き換えるチャンスを手にすることになる。それは、誰もが安心して働ける「働き方の未来」が、ついに実現するというストーリーだ。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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