キャリア

2025.11.29 10:00

オフィス復帰の義務化は新たな「ガラスの天井」、男女間の賃金格差が拡大 米国

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女性の人材流出で、イノベーションが阻害される経済的デメリットも

女性の人材流出は、多様性の問題だけにとどまらず、経済的問題にもつながり得る。

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中堅社員の交代によって生じる金銭的コストは、状況によって、当人の給与の半分から2倍程度になり得る。だが、真の意味での代償は、組織のさらに深層に及ぶ。上層部に女性が多い企業は、女性が少ない企業をコンスタントに上回る業績を上げている。中堅クラスの女性社員が企業を去ると、女性を上級の役職に導く経路にひびが入り、「上層部に女性がいない」という悪循環が繰り返されてしまう。

この状況がもたらす波紋は、オフィスの壁を越えて広がっていく。母親の就労が促されれば、それは国内総生産(GDP)の成長を牽引する原動力になる。2000年から2022年にかけて女性労働力が増えたことで、年平均で経済成長率をパーセンテージで0.37ポイント押し上げる効果があった。これは、男性の就業率の変化がもたらした0.14ポイントの2倍以上という数字だ。言い換えれば、女性が働けば、経済がうまく回るようになる、ということだ。

RTOの一律義務づけは、単に近視眼的というだけではない。企業自体の競争における優位性を喪失させるので、戦略的に見ても誤りだ。女性を阻害する企業が失うのは人材だけではない。イノベーションや組織の統率力、そして本来の意味での経済力が失われる。

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賢い企業が実践する、差別化のための施策とは

一部には、適切なポリシーを採用している企業もある。

Airbnbの「どこにでも住み、働ける」ポリシーは、従業員が自身の居住する国のどこにいても、賃金面でペナルティーを課されることなく働くことを可能にしている。Salesforceも同様のアプローチを採用し、従業員に対して、オフィス勤務、ハイブリッド、あるいはフルリモートと、どれでも自分に最も適した働き方を選ぶよう促している。

これらのモデルは、仕事を優先するのではなく、逆に人生を中心に据えて働き方をデザインする柔軟性を、女性だけでなくすべての働き手に与えるものだ。

しかも、こうした施策は成果を出している。Ciscoの調査では、働き方に関して柔軟性の高いポリシーを打ち出した結果、人材の定着率が向上した企業が、全体の69%に達している。ここからわかることは明らかだ。すなわち、働き方の柔軟性はぜいたくな特権なのではなく、業績の向上につながるれっきとした戦略ということだ。

ほかにも、ケアの担い手に関する男女差の縮小に役立つ、平等推進の考え方をもとにした福利厚生を実行している企業も存在する。乳製品メーカーのLand O’Lakes(ランドオレイクス)では、社内で保育サービスを提供している。Bank of Americaは、12歳までの子どもがいる従業員を対象とした子ども手当てを支給している。これらのプログラムは、子育て中の従業員をサポートするだけでなく、経験を積んだ人材のキャリアを出世ルートにとどめておくのにも役立つ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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