11月25日発売のForbes JAPAN2026年1月号の特集「日本の起業家ランキング2026」で7位に輝いたのは、SPACECOOLの末光真大だ。電力消費ゼロで世界を酷暑から救う独自の素材が今、国内外で注目されている。
アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビにある高級リゾートホテル「エミレーツ・パレス・マンダリン・ホテル」。施設内にある約3200㎡のテニスコートの屋根は、白色の膜で覆われている。SPACECOOLが開発した放射冷却素材だ。この素材が施された屋根の下は、周辺より気温が約5℃下がるという。その性能に今、国内外からの注目度が高まっている。
放射冷却素材はふたつの特徴をもつ。ひとつは太陽光の熱を反射して熱吸収を抑えること。もうひとつは、熱を大気を通過しやすい波長域の赤外線に変換することで宇宙空間に放射して逃がすというものだ。この素材を使った屋根の下では、太陽光による入熱量が放射する熱量より少なくなるため、昼間であっても空間が冷える。そのうえ一切のエネルギーを使用しない。
SPACECOOL代表取締役CEOの末光真大は、もともと大阪ガスの社員だった。13年、高温ガスの炎から出る光を制御する技術の開発を開始。物を温める研究に取り組んでいたが、地球から宇宙に熱を発散できれば温暖化対策になるのではと考え、17年に放射冷却素材の研究開発に方向転換。2年の研究期間を経て開発に成功した。
当時の副社長から「どう事業化するのか?」と問われた末光は「スピード感をもって意思決定し、できるだけ早く社会に届けるためにスタートアップとしてビジネス化したい」と回答。21年に、ベンチャーキャピタルのWiLと大阪ガスが共同出資し、SPACECOOLを立ち上げた。
素材は、フィルムやマグネットシート、あるいは屋根やテントなどの他社製品に貼りつけ、共同開発商品として提供しており、各所で使われている。「東京2025世界陸上」では、会場内に設置された選手や運営スタッフの待機テントとして利用された。スーパーカーレースチームのARTAは、25年8月のレース期間にSPACECOOL素材を活用した日傘を採用。選手たちがコースを下見で歩いて回る際などに使われた。



