起業家

2025.11.26 08:05

次なる舞台はハリウッド、コミスマ式メガヒットIPの生み出し方:佐藤光紀

佐藤光紀|コミスマ

佐藤光紀|コミスマ

11月25日発売のForbes JAPAN2026年1月号の特集「日本の起業家ランキング2026」で5位に輝いたのは、コミスマの佐藤光紀だ。

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マンガアプリ「GANMA!」とアニメスタジオによるIP開発の垂直統合モデルで成長する同社が目指す先とは。


佐藤光紀が長年率いていたセプテーニ・ホールディングスの社長を退任し、同社からスピンアウトしたマンガアプリ「GANMA!」のコミスマに専念しはじめたのは2024年4月。兼任をやめて変わったのは現場との距離感だ。

「シンプルに作品づくりにかけられる時間が倍になりました。もともと編集長として連載会議に月1で出ていましたが、今は2週間に1度。どの作品を連載して、どの作品にさらに投資すべきか。意思決定の回数も増えています」。

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経営者の仕事は多岐にわたるが、時間の多くをコンテンツに費やすのは、IP開発がコミスマの成長を左右するからだ。同社はマンガ家を百数十人抱えて作品をつくり、「GANMA!」で展開。さらに、アニメスタジオを所有する垂直統合モデルだ。自社運営のアニメスタジオ「Qzil.la」では他社IPの作品制作も手がけているが、今後は自社のマンガ原作をアニメ化する比率を高める構想も描く。

「マンガとアニメの事業連携を強めることで、キラーIPをもったときのリターンは飛躍的に大きくなります。この双方の事業資産をもつスタートアップはほかになく、我々ならでは特徴だと自負しています」

確かにこのモデルは当たれば大きい。しかし肝心のIPが弱いと、アニメ化に至らず垂直統合モデルを生かせない。起点となるIP開発に力を入れるのは当然だ。注力するだけあって、コミスマはヒット作を連発している。実写映画化された『山田くんとLv999の恋をする』を筆頭に、発行部数100万部超のミリオンセラー作品は3作品。

興味深いのは、ヒット作のほとんどがGANMA!でデビューした新人作家と業界未経験の編集者によるタッグで生み出されている点だろう。メガヒットIPが新人の1作目から生まれるのはよく見られることだが、編集者も業界外からという組み合わせは異例だ。

「編集は感性が必要な仕事。こうすれば再現できるというものではありません。ただ、作家さんと相性の良い編集者をマッチングさせたり、閲覧データを分析して読者の反応を反映させたりするのはテクノロジーが助けになる。アートとサイエンスの両輪で回しているから新人でもヒットを生み出せる」

業績は好調で、25年は前期比130%の成長を見込む。マンガ書籍の販売が堅調であることに加え、アニメスタジオを新たにM&Aしたこと、そして海外事業が立ち上がってきたことが大きい。

特に注目したいのは海外展開だ。マンガでは、早期に翻訳を行って海賊版を減らすことが必要不可欠と考え、現地に拠点を置き、そこから海外の出版社や配信プラットフォームなどにアプローチ。現在、展開地域は12カ国に広がった。

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文=村上 敬 写真=小田駿一 ヘアメイク=yoboon

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