マネー

2025.11.19 09:00

貿易戦争、制裁、金の台頭でドルの支配は終わるのか?

Chutima Chaochaiya/Shutterstock

Chutima Chaochaiya/Shutterstock

ドルの価値が下がらないのはなぜだろうか? これは主に中国のおかげだ。米国は巨大な消費市場であり、多くの国にとって最大の輸出先となっている。ドル安になると米国が輸入する品物の値段が上がり、同国の消費者は購入を控えるようになる。これは海外の輸出業者、特に経済成長を米国の需要に依存している中国などの国々に直接的な影響を与える。だが、この状況はいつまでも続くのだろうか? 貿易戦争や制裁、国際情勢の変化により、各国はドルへの依存を再考せざるを得なくなり、ストレスの兆候が明らかになりつつある。

advertisement

投資家にとって、ドルの運命は極めて重要だ。ドルは世界の資本の流れや商品価格、そして国際市場の相対的な動きに影響を与える。ドルの覇権が変化すれば、為替相場やインフレ期待、世界の資産評価に広範な影響を及ぼしかねない。

米国の通貨に対する各国の利害関係

現時点では、中国は依然としてドルの急落を防ぐ強い動機を有している。米国が2023年の中国の総輸出に占めた割合は約14%で、同国の国内総生産(GDP)の約3%に達した。輸出が依然として重要な成長要素である中国経済にとって、これは相当な割合となる。中国は頻繁に為替市場に介入し、ドルを購入し人民元を売却することで、人民元の急激な上昇を抑えつつ輸出競争力を維持している。この論理は、中国だけに限った話ではない。

韓国や東南アジア諸国のような輸出主導型経済にとって、ドルの安定は、貿易、雇用、そして全体的な経済成長を支える。こうした国々の中央銀行は多額のドル準備を保有し、輸出主導型経済の成長を守るために為替市場に積極的に介入している。米国への主要な輸出国ではない国々でさえ、貿易相手国が自国製品をドル建てで価格設定するため、同様の行動を取らざるを得ない場合が多い。したがって、国際社会は安定したドルを維持することに共通の利益を有しているのだ。これは単に米国を支援するためではなく、自国の安定と繁栄にも寄与するからだ。

advertisement

なぜドルが支配的なのか

ドルが主要な国際準備通貨としての地位を保っている背景には、米国債に対する強い需要や米経済の規模、金融市場の深さ、地政学的な影響力などがある。米国の国債市場は、世界で最も規模が大きく流動性の高い資産クラスとして存在し、投資家に安全性や透明性、そしていつでも多額の資金を移動できる能力を提供している。他のいかなる通貨も、この機能を充足するのに十分な規模と開放性を持つ市場を有していない。

世界中の銀行や企業は、貸し借りや国際取引でドルに依存している。長年にわたり、これはネットワーク効果を生み出してきた。すなわち、ドルの使用が普及すればするほど重要性が増していくのだ。国際貿易や金融、準備資産としてドルが広く採用されていることにより、同通貨の価値を支える構造的な需要が生まれている。しかし、この均衡はいつまで続くのだろうか?

次ページ > 貿易戦争、金、デジタル通貨――ドルに対する脅威

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事