マネー

2025.11.19 09:00

貿易戦争、制裁、金の台頭でドルの支配は終わるのか?

Chutima Chaochaiya/Shutterstock

貿易戦争、金、デジタル通貨――ドルに対する脅威

米中関係の緊張が、この力学を複雑にしている。関税やハイテク輸出規制、供給網の変化を特徴とする現在進行中の貿易戦争は、貿易パターンを変え始めている。中国税関のデータによると、1~9月期の中国の対米輸出額は前年同期比16.9%減少した。一方で、中国の輸出額は世界全体で同6.1%の伸びを示した。これは米中の分断を示唆している。中国は新たな市場を模索しているが、米国はあまりにも大きな存在であり、簡単に代替することはできない。こうした政治的緊張にもかかわらず、この二大経済大国間の経済的結び付きはドル需要を支え続けている。

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さらに、数多くの世界的な変革が、ドルの優位性に徐々に挑戦を突きつけている。ドルが国際金融において果たす極めて重要な役割によって可能となった米国の経済制裁の広範な適用は、一部の国々に代替手段の積極的な模索を促している。ロシアがウクライナに侵攻して以降、この状況は特に顕著となっている。米国はロシアの外貨準備を凍結し、同国の大手銀行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除した。この措置はドルの覇権に伴う金融上の優位性を浮き彫りにした一方で、米国を中心とした制度への過度の依存は政治的リスクを伴うという明確な警告を他国に発した。その結果、複数の国々が代替決済システムの構築や現地通貨を用いた二国間貿易の強化、外貨準備におけるドル依存度の低減に向けた取り組みを加速させている。

米国の債務は今や38兆ドル(約5900兆円)を超え、政治的二極化と相まって財政責任への懸念が高まり、外貨準備の多様化を進める国もある。例えば、中国、インド、トルコなどの中央銀行は、金準備を徐々に増やしつつある。これは制裁やインフレ、金融リスクに対する予防手段と見なすことができる。同時に、デジタル通貨の出現や、世界中で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入が進むにつれ、ユーロや人民元などの通貨のデジタル形態がドル建て取引の代替手段となるなど、より多極化した通貨環境が促進されている。こうしたデジタル化の進展は、SWIFTなどの仲介機関への依存を減らし、従来のドル中心の枠組みに挑む可能性がある。

forbes.com 原文) 

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翻訳・編集=安藤清香

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