サイエンス

2025.11.19 18:00

「遊ぶホッキョクグマ」など、2025年NBP短編映像受賞4作品を紹介

Shutterstock.com

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2025年の「ネイチャーズ・ベスト・フォトグラフィー(NBP)」コンテストの短編映像部門は、期待を裏切らないものだった。映像制作者たちは、氷が浮かぶ海から、人里離れた山脈までのさまざまな場所で、今まさに動いている生き物たちの類いまれな瞬間をとらえており、自然の物語は、動画でも静止画と同じくらい力強く語られることを証明した。

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2025年の受賞作は視聴者たちを、地球でもひときわ壊れやすい生態系へといざなっている。とりわけ、最優秀賞を受賞した「泳いで遊ぶホッキョクグマ(Polar Bear Swimming and Playing)」は、見る者を引きつけるだけでなく、映像が代弁しているものという点でも際立っている――地球屈指の過酷な環境に生きるものたちの喜びと、そこで生き抜くという実態だ。

受賞したほかの作品でも、そうしたつながりと耐久力というテーマが一貫して見られる──孤独な北極圏から、パタゴニアの荒野、生命に満ちあふれる熱帯のサンゴ礁まで。

1. 最優秀賞:「泳いで遊ぶホッキョクグマ(Polar Bear Swimming and Playing)」

北極の冬が夏の光の中に消えると、海氷のふちを泳ぐホッキョクグマの姿がよく見られるようになる。狩りや探索をしていることもあれば、この作品のように、単に遊んでいるだけのこともある。

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ノルウェーのスバールバル諸島沖で撮影されたこの映像では、アザラシが呼吸に使っていた古い海氷の穴でひとり遊びをする若いメスのホッキョクグマ(ニックネームはグリンチ)を、写真家で映像作家のフロリアン・ルドゥーがとらえている。その遊びに満ちた好奇心は、かわいらしいだけでなく、示唆に富んでもいる。乏しさで特徴づけられる世界でさえ、喜びの瞬間は見つかるのだ。

ホッキョクグマ(学名:Ursus maritimus)は、北極の移ろう海氷に対して独特な適応を遂げた頂点捕食者だ。狩りや繁殖を海氷に頼る、なかば海生の生活様式ゆえに、気候変動の影響を特に受けやすい。北極は、世界平均よりも急速に温暖化しているため、ホッキョクグマをはじめとする北極の生きものたちは、海氷シーズンの短縮と、獲物を手に入れる機会の減少に直面している。

そうした生きものたちが生き延びられるよう、生息地の保全や気候政策の支持といったさまざまな保護の取り組みが重要となっている。ルドゥーの映像は、単なる遊び好きのクマのポートレートではない。切迫した事態の影に覆われているときでさえ、幸福な瞬間が存在することを思い起こさせる。

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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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