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2025.11.24 16:00

米感謝祭市場に伝統製法の高級「ターキー」で乗り込む英国農家の野望

ポール・ケリーと彼のケリー・ブロンズ種の野生の七面鳥(Photo by Cate Gillon/Getty Images)

現在の米国シェアはわずか、しかし無借金の家族経営で数年後の売上拡大を目指す

イータリーなど全米の高級食材店でターキーを販売するケリーブロンズの2024年の売上高は、2800万ドル(約44億円)だった。そのうち米国の比率は約4%にすぎないが、ケリーはバージニア州での生産量を増やすことで、3年以内にこの比率を25%に引き上げられると見込んでいる。また、2028年には年間売上高を8000万ドル(約126億円)に伸ばすことを目標に掲げている。

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ケリーブロンズは、ケリーの両親であるデレクとモリーが1971年に創業した企業で、現在も100%家族経営だ。同社は、長年にわたり多くの出資提案を受けてきたものの、外部資本を一切受け入れていない。同社はこの60年間、ほとんど負債を抱えずに着実な成長を続けており、現在も無借金経営を維持している。

「これまで私たちが下してきた決断は、どれも“手が届く範囲”のものだったため、夜も安心して眠れていた」とケリーは語る。ただし彼は、売上の大半が11月から翌1月に集中するこの事業が困難なものであることを認めている。「それでも私たちは米国で一気に農場を買い、加工施設を建てた。1羽も売れていない段階でそれに踏み切った。リスクは取ったが、取れる範囲のリスクだった」とケリーは話す。

人々は、お金を節約するためにターキーを買うわけではない

ケリーは、自社のターキーが高価であることが「問題」になり得ると認めている。ただし彼は、ケリーブロンズの製品が一般的な冷凍ターキーの3倍の期間をかけて育てられていることや、つるして熟成させる過程で重量が3%減ること、そしてすべての工程を手作業で行っているため労働コストがかさむ点を強調する。

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「人々は、お金を節約するためにターキーを買うわけではない。米国では感謝祭になると極上のワインや最高級シャンパンの売れ行きが跳ね上がる。それは、英国のクリスマスと同じだ。誰もが買えるわけじゃない。でも、買える人にとっては選択肢になる」。

英王室や有名シェフから長年支持され、母国イギリスでは最高峰の評価を確立

ケリーブロンズは、英国ではハロッズやセルフリッジズといった高級小売店や精肉店」にターキーを供給している。英王室や、シェフでレストラン経営者のゴードン・ラムゼイも、長年にわたりこのブランドを支持してきた。

ケリー家は、バージニア州にある約53万平方メートルの土地に加え、スコットランドとイングランドに約36万平方メートルを所有し、別途約57万平方メートルを借りている。現在では、ケリーブロンズ向けにターキーを育てる英国の農家も13軒に増えており、その中には、25年にわたり顧客だった後に5年前から飼育を始めた著名シェフのジェイミー・オリヴァーも含まれている。オリヴァーはケリーブロンズを「ターキー版の和牛やパタ・ネグラのハムと呼べるほど、同種のものの中で間違いなく最高峰だ」と評している。

「私がターキー農家になったのは必要に迫られてではなく、卓越した職人一家とその技を支えたいと思ったからだ」とオリヴァーはフォーブスに語る。「ケリー家は、英国の農業において“正しいこと”を体現する存在だ。彼らは歴史から失われかけていた価値観と手法を蘇らせた」。

感謝祭のために最高のターキーを作り続けたい

そして創業から50年以上を経て、ケリーブロンズはついに米国の高級ターキー市場に本格的に挑む準備を整えた。「私たちは冷凍ターキーの業者にはならないし、巨大企業にもならない」とケリーは言う。「私たちは小さなニッチ企業だ。感謝祭のために最高のターキーを作り続けたい。それだけだ」。

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翻訳=上田裕資

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