2025年の大阪・関西万博の日本館が掲げたテーマは「いのちと、いのちの、あいだに」だった。以下は、日本館基本構想に携わった塩瀬隆之 京都大学総合博物館准教授による寄稿である。
塩瀬氏は教育の分野をはじめ、この「2025大阪・関西万博」日本館基本構想委員や、「2027ベオグラード万博」日本館基本計画委員など活動・貢献領域も広いが、そもそも博士課程で「機械学習による熟練技能継承支援システムの研究」を専門とした工学博士であり、そのとき技能継承システムの範とした『式年遷宮』が日本古来の伝承システムとしてずっと頭にあったという。
大阪・関西万博会場から大学生が中学生に届けたオンライン授業。その背景には、パンデミック下で生まれた日本館基本構想と、未来への希望が込められていた。
大阪・関西万博の会場から飛び出した学びの循環
2025年10月某日、大阪・関西万博が閉幕を迎える頃、万博会場からオンラインで遠隔地に発信された特別授業が4府県にまたがる約470名の中学生に届けられました。講師を務めたのは、日本館を体験した約50名の大学生アンバサダーたち。日本館のテーマ「循環」を大学生なりに咀嚼し、オリジナルの問いをつくって中学生たちに投げかけました。
「持続可能な社会」と聞くと、少し難しそうな話題だと身構えてしまいそうになるときもあります。しかし、大学生たちが考えてくれた問いは、中学生が自分ゴトにしやすい言葉や体験を選んでくれています。これらのよく練られた問いが自然に中学生の活発な議論を引き出してくれていたため、授業を見守っていた筆者や日本館スタッフもまったく補足の必要がない内容で、オンライン授業は終始すべて大学生に任せきることができました。大学生の問いを介して、日本館のメッセージが次世代へと受け継がれていく瞬間に立ち会えた実感がそこにありました。



