日常導線にある「食べる」から元気を考えた
——プロジェクトからは女性の鉄分不足を解決する、「元気じゃない日のフライパン」という鉄製フライパンが生まれました。なぜ「食」に着目したのですか?
奥田:日本の女性は慢性的な鉄分不足に陥っていて、PMS(月経前症候群)、産後うつ、更年期障害をはじめ、健康・美容・集中力・社会的生産性にも影響していることをプロジェクトメンバーが文献で知り、チーム内でも「やばいよね」、「なんとかしたいよね」と盛り上がっていたんです。サプリを飲むという方法もありますが、なるべく日常導線を変えずに生活の中に入っていく方法を模索して、昔ながらの鉄の調理器具に着目しました。
これもめぐり合わせで、私の部に大阪府八尾市の町工場のブランディングをしているメンバーがいたことから、八尾の藤田金属さんという金属加工会社との協業で、軽くておしゃれな鉄製フライパンができました。
第2弾の「今日を元気にするお味噌汁パン」では、これで作った味噌汁一杯でどのくらいの鉄分摂取ができるのかを計測したところ、約9.7ミリでした。これは鉄分が特に不足する月経時における1日の摂取推奨量の90%以上にあたる鉄分量で、これだけの鉄分が補給できるプロダクトと立証できるものでした。
——味噌汁一杯で1日分の鉄分が!
奥田:第1弾、第2弾はクラウドファンディングで販売して、お味噌汁パンの反響は絶大でした。発端は女性の鉄分不足なんですけど、子どもの鉄分不足が気になっていたとか、高齢の両親にこれで味噌汁を作りますとか、いろんな方が喜んでくれました。普段はクライアントの先に一般生活者の方々がいるので、生活者の方々から直に応援メッセージをいただくのは初めてで、うれしかったですね。
第3弾として「元気を補給するアイス味噌汁お椀タンブラー」を企画中です。そもそも、アイス味噌汁という文化がないから、オフィス街にキッチンカーを出してアイス味噌汁を売るところから始めようか、という話もしています。いろんな味噌汁を試していますが、なめこのアイス味噌汁は若干のタピオカ感があって、ストローで飲むとトゥルトゥルって、いい感じなんですよ。
——フェムテックのプロジェクトを進める難しさはなんですか。
奥田:一般的に日本の市場では新しいテクノロジーに対して消費者と事業会社の反応が難しいといわれています。アメリカがうまくいっているのはトレンドに乗れているから。更年期ソリューション事業を立ち上げているハル・ベリーをはじめ、ハリウッドのセレブたちが事業に乗り出しているという文脈もあって、数万円のオーラリング(健康状態の確認、月経の予測ができるスマートリング)も売れています。おしゃれな物から自分語りができるみたいなところも魅力なんだと思います。


